雑談をしている中で、Aさんからこんな相談を持ち掛けられました。
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3歳の娘が、最近「保育園に行くのやだ」って言うんだよね。
行く前にぐずってしょうがないの。
娘に聞いてみたら「給食がまずい」って。
以前はそんなこと言っていなかったんだけど。
給食って栄養バランス取れるから本当は食べてほしいんだよね。
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みなさんだったら、こう相談された時、どう返しますか?
■今日の質問
「目の前の話し手は、今、何を望んでいるのか?」
□解説
アドラーの心理学の観点に立てば、
人が何かをする/しない…ということには、
~したいから / ~したくないから
~してほしいから / ~してほしくないから
と何かしら目的があります。
つまり、話し手が何かを話す…ということには、
本人があまり意識していなくても潜在的に何かしらの意図はあります。
今回のシチュエーションで言えば、話し手が何かを話すことで、
・「こうした方がいいよ」というアドバイスを具体的に求めていたのか?
・とりあえず話すことで、自分の不安な気持ちを少しでも解消したかったのか?
・聞き手に同調してほしかったのか?
というものです。
ちなみに、高校生の娘を持つBさんは、こう返答しました。
「そのうち、そんな悩みが『いかにちっちゃかったか』わかるわよ。
この先、もっと大変な悩みにぶつかるから。」
Bさんがそのように発言する気持ちはわかります。
ただ、Aさんはその時、どんな気持ちでBさんの話を受け止めたでしょうか…。
Cさんは、こう返答しました。
「そんなに嫌だったら、その保育園に『給食の味を改善してほしい』って言ってみたら?」
「課題解決」のコミュニケーションです。
私もこれはよくやっていたのですが、
相手の悩みや相談事に対して、すぐ「課題解決」の思考が働いてアドバイスや提案をするというものです。
これは話し手からしたら、
「いや、そういうことじゃなくて」「確かに言っていることはわかるんだけど」という気持ちになることが往々にしてあります。
たとえ言っていることが正しくても、「行動に移してみよう」という気持ちになれないことも…。
Dさんは、こう返答しました。
「Aさんの気持ちはとてもわかるよ。確かに親としては辛いよね。」
いわゆる「共感」です。
Aさんからしたら、ほっと安心するかもしれません。
ただ、具体的な解決に至るか…というと別の話になります。
では、Aさんにとってベストな返答はどういったものなのでしょうか?
それは傾聴して、共感しつつも、相手が自ら答えを見つける糸口になるような「質問」をすることです。
たとえば、こんな返答になります。
「Aさんの気持ちはわかるよ。確かに親としては辛いよね。」
「…ちなみに、保育園を変えるという選択肢とかはあるの?」
「…ちなみに、娘さんは本当は何を望んでいるのかな?」
「…娘さん、どんな給食だったら喜んでくれるんだろう?」
などです。
質問をされると、人は考えます。
自分の考えが及んでいなかった質問であればなおさらです。
悩みに陥っている人は、往々にして思考が狭まっているので、
「自分が考えたこともなかった質問」は新たな「気づき」のきっかけになります。
「コミュニケーションの秘訣は『沿いつつずらす』に尽きる。」
明治大学の齋藤孝教授は書籍「質問力」で言っていましたが、言い得て妙と思いました
「沿う」が傾聴、共感であれば、「ずらす」は別の視点からの質問だったりします。
よりよいコミュニケーションで、人間関係をより豊かなものにしていきたいものです。