【第60号】「おっさん化」社会

森喜朗氏の「わきまえない女」発言は、ダイバーシティ(多様性)の難しさを考えさせられるものでした。

今回は、その「わきまえない女」の張本人こと、谷口真由美氏が記した
おっさんの掟: 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」を読了しました。

今、組織の活性化に携わっている筆者でありますが、
まさに企業組織で起きている問題の多くは著書の内容とぴったり重なると感じました。

時代の転換期にあり、企業組織も今までになく「変化」を求められています。
ですが、なかなか変わらない現実があります。
そのボトルネックは、著者の言う「おっさん化した人」たちにあると感じます。

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多くの人は、意欲や気概を持って企業に入社します。
しかし、働いていく中で「おっさん化した人」が幾度となく目の前に立ちふさがります。
当然、筆者も経験しました。

私が今まで携わった中での「おっさん化した人」の特徴は以下の通りです。
※ちなみに、「おっさん化した人」というのは、全員の男性中年を指す訳ではありません。
男性に限らず、「おっさん化した考えをもった人」全般を指します。

1.【自分の立場を守ることが最優先】
彼らは企業の業績や成長に長く貢献してきたという点では、確かに「功労者」です。
様々な苦労に耐え、やっと今の地位を得ました。
そんな彼らの最大のリスクは「自分の地位や職を失う」ことです。
階段を上がれば上がるほど、そこから落ちることが怖くなるのと同じです。
だからこそ、生殺与奪の権を握る「上」に対しては従いますが、
一方で「下」の立場の人には「マウントを取る」傾向にあります。
※ただ、最近は「下」の立場の人から「ハラスメント」と訴えられることもあり、
渋々「下」の立場の人にも気を遣うようになってきています。
すべては自分の身を守るためです。

2.【エネルギーの向けどころが違う】
仕事は本来、顧客への貢献やビジョンの実現に向けて、情熱を燃やしエネルギーを費やすものです。
変化が著しい時代にあり、変化に挑戦するのは当たり前のことで、現状維持は停滞や凋落を招きます。
しかし、彼らは「変革」を嫌います。
自分が長年かけて築き上げた城(縄張り)や経験があるからです。
自分の現状を脅かされるリスクがあると感じたら、彼らは牙を剥きます。
「今まで通りでもなんとかなっているのに、なんでわざわざ変える必要があるのか?」
「それをやってうまく行かなかったら責任を取ってくれるのか?」
エネルギーの発露の場面が違います。

3.【「自分たちはこれだけやってきた」という自負】
彼らにとっては、「その世界でかけてきた時間と過去の成功体験」こそがプライドです。
だから、外の人間がニュートラルな視点で提案を言っても、
「そもそも自分たちのこと何も知らないくせに」
「どうせ口先だけだろ」
という感情が根っこに残ります。
だから聞く耳を持ちませんし、変わりません。
ダイバーシティとは真逆のマインドセットです。

4.【言いたいことはわかる。でもいきなりは変えられない。】
基本自己保身の傾向が強いので、自分から離れて物事を考えてみることに慣れていません。
ゆえに、目的や大義から逆算して物事を考えることが苦手です。
また、「そもそもの前提」を疑ってみることも苦手です。
例えば、予算達成など業績目標達成などの短期的な成果ばかり追い求めるのも、
「今までそうしてきたし、今までのやり方で何とか乗り越えてきた」という理由の一点に集約されます。
むしろ悪いのは「そのやり方に従わない人間」になります。
だから、「目的や今起きている変化に対して、考え方やアプローチを変えるべきでは?」と訴えてもなかなか響きません。
「君の言っていることはわかる。でも、今すぐには変えられない。」
様々な「しがらみ」を考えると変えたくない気持ちも理解できますが、
どこかで変えない限り、閉塞感は打破できません。

5.【つるむ】
自分の思い通りにならない状況では、「おっさん化した人同士」はつるみます。
「おまえもか〜」「おれもだよ」
居酒屋でグチるぐらならまだ微笑ましいのですが、
つるんだ者同士が「自分たちの考えこそが正しい」となると危険です。
そこに連帯感が生まれ、いよいよもって変化に抗う抵抗勢力になります。

他にも「おっさん化した人」の特徴はありますが、私が今までの経験や今の仕事を通して感じたことは5点です。

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「おっさん化した人」たちと対峙したとき、若者なら一度や二度は心を折られます。

「仕事ができない自分が悪いんだ」と自分を責めてメンタルを病んでしまう若者、
「こんなおっさん達とやってられんわ!」と仕事を割り切ってしまう若者、
早々に見切りをつけて辞める若者も増えてきました。
彼らに気に入られる上下関係をわきまえた若者もいますが、染まってしまえば「次世代のおっさん」と化する危険もはらんでいます。

一方、辞めていく若者を見て、「おっさん化した人」たちは「イマドキの若者」で片付けます。
辞めていく本当の理由を知ろうとしません。いや、知る必要がありません。
自分の立場を脅かす人間が一人いなくなったわけですから。

ちなみに「おっさん化した人」たちは、この時代に生まれたわけではなく昔から存在していました。
では、今なぜ「おっさん化した人・組織」が問題になっているのでしょうか?

それは、ハラスメント・離職・心身不調といった問題の温床となっていることに加え、
モノに溢れ、何が売れるかわかりにくい時代において、
「同調圧力の強い単一思考型の組織」が多様性を奪い「可能性の扉」を閉ざすからです。
「試してみなければわからない時代」において、挑戦や変化を拒む組織は命取りになります。

「そんなの経営者が考える問題でしょ」と言われそうですが、変化は「現場」でこそ起きています。

これまで評論の立場で意見をつらねましたが、「おっさん化」は筆者も含め人間なら誰しもはらんでいる病理と思います。
「現状を変えるのは面倒」
「自分の今までのやり方にこだわる」
「自分の立場を守りたい」
「自分に矛先を向けられたくない」という気持ちです。

「自分こそ『おっさん化』していないか?」
と客観的に振り返る機会となる1冊となりました。

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