【第81号】引き受けの法則

書店などに行くと、コミュニケーションに関する本がズラッと並んでいます。
「伝え方が9割」「話し方が9割」など、「自分→他人」に関わりへの関心は高いようです。

書籍「伝え方が9割」では以下のように述べています。
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コミュニケーションの本質とは「相手に何かを伝える」こと。
だとするなら「相手に伝わるように伝える」ことこそが重要。
会話のキャッチボールにおいて、相手が取りやすい場所に、取りやすい速度で投げること。
「伝えるコツ」の一つは「相手のことを考えて話す」こと。
そのためには、相手を理解するためにまずは相手の話を聴くこと。
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筆者も、コミュニケーション系の研修で傾聴法や質問の仕方、フィードバック、共感など、
「自分→他人」への関わり方のスキルを伝えることが多く、受講者の気づきが多いことも実感します。


一方で、「他人→自分」に対して、思わぬ関わりをされたときの「受け身」については盲点なようにも感じます。

例えば、
「他人から心無い一言を言われた。」
「友人から文面で一方的に批判された。」
「周囲の人がいる前で怒鳴られた(あるいはバカにされた)」
「親切心で譲ったらお礼すらされなかった。」
「『ながら歩き』で相手からぶつかってきたのに無視して通り過ぎていった」
「良かれと思ってやっても誰も気づいてくれなかった。」
「相手に頼んだことを、相手が忘れていた」
などです。

こんな経験は、誰しもしたことがあるはずです。
以前に比べると、このような「心ない対応をされること」が増えたように感じます。

「忙しい」と「心」を「亡くして」しまいます。
「忘れる」ことも、「心」を「亡くす」という点では同義です。
そういった意味では、何かに「心亡い状態」の人が増えているとも言えそうです。

一方、そういう関わりをされた受け手は、「受け身」がちゃんと取れないと、心がいとも簡単に折れてしまいます。

昨今「〇〇ハラスメント」が増えたのも、心ない人の発言もさることながら、
受け手の「受け身」が不十分であるからとも言えそうです。

その場合、他人の関わり方はコントロールできないので、
自分の心のあり方を見直す方が得策と思います。

そのための方策はいたってシンプルです。

それは、「引き受けの法則」です。

多摩大学教授の田坂広志氏からの引用になりますが、これは最強の受け身技と思います。
筆者もこの受け身をよく取ります。

「自分の普段の行い(因)が、周囲の結果となって現れる」という因果応報論とは違います。

ストレスフルな経験をした時に、
「この経験は、自分にとってどんな意味があるのか?」
「この経験は、自分に何を学べと言っているのか?」
「この経験は、自分にいかなる成長を求めているのか?」

どんな経験も事象も「自分ごと」としていったん引き受け、
自分と向き合い、そこから教訓を得る心の術です。

「なんであの人は…」と他人を責めるわけでもなく、
かといって、「自分が悪いことをしたからこんな結果になったんだ」と自分を責めるわけでもありません。
どんな経験も肥やしにして、よりよい生き方につなげていく未来志向の思考法です。

これは、アウシュビッツ収容所での過酷な経験を通じながら人生訓を得た、
精神科医のヴィクトール・フランクル氏の名言とも通じます。

「私たちは人生に問われている存在である。」

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