【第82号】守破離

病院への見解として以下の一節を読み、ふと考えさせられました。

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「私は基本的に病院は嫌いで、病院で治してもらおうという気がない。
 なぜなら、結局のところ医師も根本的には知識の範囲での事実提起しかできず、
 生命を治す術は持ち合わせていないから。」
―――

この一節を読んでいただいて、読者のみなさまはいかが思われましたでしょうか。
「病院で治してもらわない」というのは常識からかけ離れていますし、当然反論もあると思います。
また、救急医療や外傷の施術など例外も存在します。

ただ、筆者はこの一節の「病院・医師」を、
筆者の職業でもある「コンサル」に置き換えて読んでみると、とても腑に落ちました。

―――
「私は基本的にコンサルは嫌いで、コンサルに解決してもらおうという気がない。
 なぜなら、結局のところコンサルも根本的には知識の範囲での事実提起しかできず、
 根本的な問題を解決する術は持ち合わせていないから。」
―――

筆者自身、「職業は何ですか?」と聞かれると、
「コンサルみたいな仕事です」と言いますが、
実は「コンサル」という言葉に良いイメージを持っていません。

コンサルは、専門分野については人一倍勉強しています。
問題解決のための論理的思考力も持ち合わせています。
それゆえか、「客観的な論拠に基づいて、きちんとしたプロセスを踏んで対応している。
だから、この方法論を持って変わらなければ、それはクライアントの側に問題がある。」
と考えるコンサルは少なくないように感じます。
クライアント(依頼人)からすると、方法論に固執せず、問題解決のためのあらゆるアプローチを取ってほしいと願うものです。

医療に関しては患者の「命」を預かっているわけなので、
医師本人が「本当はこうした方がいい」と思っていても、
その判断が医療知識に基づいたものでなければ、患者に万が一の時があった時に責任を取れません。

医師・コンサルに共通しているのは、客観的な知識や情報に基づいた判断がベースにあり、
個人的な判断や主観が入り込みにくいという点です。

これは、昨今よく言われる「コンプライアンス(法令遵守)」の考えにも相通ずるところがあります。
企業は、コンプライアンスを遵守することが「自己防衛」にもつながります。

しかし、仕事というのは本来、自分たちの身を守るために存在するのではありません。
「顧客の問題を解決すること」に存在意義があります。

方法論や知識は、あくまでそのための手段でしかありません。
その手段が通用しなければ、別のアプローチを考えるのが筋です。

現代は問題が複雑多岐にわたり、高難度化しています。
複雑化、高難度化するほど、今までの手段(知識・情報)は通用しにくいものです。

だからこそ、問題を解決するには、
一人ひとりと真摯に向き合い、親身になって関わり、
知恵や創発を駆使して、時にはマニュアルを冒してでも対処していく…
という勇気や覚悟さえ求められます。

日本の古典芸能では「守破離」という考えがあります。
「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。
「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。
「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。

現代の仕事に意訳をすれば、
「守」は、情報収集、勉強や体系的な知識の習得、型通りに行うこと。
「破」は、トライアル&エラー、実体験を通じた経験学習、「離」に至る途中段階。
「離」は、困難や未知の問題に真摯に向き合い、新たな視点やアプローチを見出すこと。
とも言えます。

「守」にとどまっている人や組織が多いと感じる昨今にあり、
医師やコンサルに限らず、あらゆる仕事に言えることは、
「離」の感覚を持ち合わせた人が、複雑かつ高難度化している問題を解決することができ、
その希少価値が高まっているということです。

「離」の感覚を持った人に共通していることは、「目的思考」であることです。
「目的達成」を第一義において、柔軟に対応していく考え方です。

筆者自身、「守」を大事にしつつも「守」だけに囚われず、
「離」の姿勢をもって、日々精進していく所存です。

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