【第84号】”ごみ拾い”が組織を変える?

これは、2019年1月放映クローズアップ現代+「イマドキ若者育成術」の話です。

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4232/

 

筆者自身、当時メンタルトレーナーとして、明治大学ラグビー部に関わらせていただきました。
周囲の方から、「なんで明大ラグビー部はあんなに強くなったの?」という話を聞かれました。
強くなったのには、もちろん様々な要因はあります。

ただ、多くの方の疑問は「なんで“ゴミ拾い”で強くなるの?」といったものでした。

これは決して、「ゴミ拾いをしたら運が良くなる」という迷信めいた話ではありません。

実はこの取り組みは、人と組織がる強くなる上で「理に適った話」であることをお伝えしたいと思います。

 

例えば、読者のみなさまが「受験生」だったとします。
受験生として最も多くの時間を費やすのはもちろん「勉強」ですよね。
当時はどんな心の持ちようで勉強していましたか?

筆者は、大学受験浪人時は勉強のことだけに囚われていて、家事炊事はすべて親任せでした。
自分が勉強すること、自分がリラックスすることだけに時間を充て、すべてを自分中心に考えていました。
さらには「勉強をやっている自分は尊い」とすら思っていました。
ですから、親から「自分で食べたものくらい自分で片付けなさい!」など言われた時は、カチンと来たのを覚えています。

競技であれば、技術や体力向上のために必要なトレーニングはするけれども、それ以外の事は一切しないという考えです。
ですから、トイレのスリッパを並べるとか、靴を並べるとか、落ちているゴミを拾うとか、トレーニングルームの機材を元に戻すとか、そんな“どうでもいいこと”に意識を向けたり、時間を使っている場合じゃありません。
そんな暇があったら、試合に勝つことや、自分の技術や体力の向上に意識を向けた方がまだマシです。

仕事であれば、売上につながる事はやるけれども、売上につながらない事は一切やらないという考え方です。
例えば、「職場にあるゴミ箱を集めて捨てるなんて、自分がやる仕事じゃない。そんなのは若手に任せて、自分はより儲けになる仕事に専念すべき…」という考えです。

そう考える理由も分かりますし、それによって結果が出ることも当然あります。

ですが、そんな考え方や心の持ちようでいると、どんなことが起きるでしょうか。

 

これは実は筆者が「しくじり体験」済みです。
「自分の思い通りに物事を進めたい」という思いが強いあまり、
自分の思い通りに物事が進まなかったり、想定外のことが起きたり、邪魔が入ったりすることによって、
すぐに心が乱れました。

先ほどの例でいえば、「浪人でもう後が無いというのに、親は自分のこと分かって言っているのか?」という気持ちになり、
ストレスを覚えました。
また、自習室で勉強しているときも、周囲の人の書く音が気になって「もっと静かに書いてくれ!」と、
イライラしては集中が途切れていました。

まさに、ここに落とし穴があります。

 

読者のみなさまが1日を振り返ってみればわかるとおり、1日のうちで自分の思い通りに物事が進む事はめったにありません。

仕事で言えば、突発的な相談、急なトラブルやクレーム、上司からの一方的な指示…。

競技もしかりです。天候の変化、体調の変化、思わぬ失敗、自分が思うように評価されない、など…。

 

自分中心かつ、目先の利益ことだけ考えている人ほど、
想定外のことに対して、いとも簡単に足元がすくわれます。

そしてこの心の揺れが、イライラやストレスにつながって、集中力を欠き、自滅につながります。

一方で、普段から何の利益にもならないことでも“気づいたこと”に対して行動を起こしたり、
誰もが嫌がることを率先して取り組んでいる人はどうでしょう。

「今目の前で起きている事柄」に対して、自分の行動を合わせていくことで、
「思い通りにならない事柄への対応力」も身に着きます。

つまり、心が揺れにくくなります。

さらには、日常でのちょっとした“気づき”が増えます。
それが試合中でのちょっとした“気づき”にもつながります。

つまり、視野の広さにつながります。

だから、想定外のことが起きても、試合で劣勢になるなど、
色んな事柄が起きたとしても、心の揺れは最小限に止めることができます。
さらには、ちょっとした変化に気づき、対応していくこともできます。

一人でも多くがそういう人になることで、チームとしても強くなっていきます。

「勝つためにやる」のではなく、
「負けないためにやる」取り組み。
それが「ごみ拾いが組織を変える」ことの理由です。

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