【第88号】仕事におけるコミュニケーション力 ~後編~

【前号の続き】
仕事や競技におけるコミュニケーションは「成果」が目的であるという点で、他の場面でもコミュニケーションとは一線を画します。

そして、仕事や競技におけるコミュニケーションは「思い通りにならない状況」でこそ、その真価が問われます。

コミュニケーション力が低いと、以下のような対応になります。
【伝え手】
・苛立ちや不平不満をぶつける。
・相手の目線にならず、ただ自分が言いたいことだけ言う。
・一方的に指示をする。
・摩擦を回避する。 など

【受け手】
・伝え手の発言に対して、ネガティブな感情を抱き、視野狭窄(きょうさく)に陥る。
・「面倒な伝え手」を遠ざけ、「面倒なこと」は避け、自分の殻に閉じこもる。
・話半分で聞いていて、「自分ごと」として考えず「他人ごと」として捉える。

一方で、コミュニケーション力が高いと次のような対応になります。
【伝え手】
・わかりやすく伝える(イメージを想起させる)ことができる。
・相手に配慮しながら自分の想いを伝える
・「問いかけ」を通じて、相手に気づきを促す。
【受け手】
・相手が言っていることを正しく理解できる。
・「自分のモノサシ(判断基準)」はいったん横において、まずは相手の理解に努める。
・相手の言わんとしていることを汲み取ることができる。
・相手のホンネを引き出すことができる。
・厳しいフィードバックにも「聞く耳」を持つ。

伝え手・受け手ともこのようなコミュニケーション力を備えていれば、困難な状況はきっと乗り越えることができるでしょう。

ただ、両者がそういうコミュニケーション力を持っているとは限りません。

そこで、「伝え手」と「受け手」どちらがコミュニケーションでは大事でしょうか?

答えは意外かもしれませんが、「受け手」です。

どんなに伝え方が素晴らしかったとしても、受け手が受け止められなければ、コミュニケーシンは成立しません。
一方で、伝え方がどんなに悪くても、受け手がきちんと受け止めることで、コミュニケーションは成立します。
コミュニケーションは、受け手に伝わってはじめて成立します。

極端に言えば、「コミュニケーションは受け手が9割」です。

だからこそ、仕事におけるコミュニケーションでは「受け手」の能力を高めていくことが肝要です。

私たちは、コミュニケーション力を高めることにおいて、
・プレゼン力
・話し方
・ロジカルシンキング
・知識
など、伝えるスキルを得ることには躍起ですが、

相手を理解するための、
・非言語表現を感じ取ろうとする姿勢(観察力)
・自分と違う考えを受容する姿勢(多様性の理解)
・ニュートラルに話を聴く姿勢(傾聴力)
・相手がつい話したくなるような雰囲気づくり(寛容な心)
などの「受け手のコミュニケーションスキル」ついては「盲点」になっているような気がします。

では、「受け手のコミュニケーションスキル」を高めるためには、何が必要でしょうか?

筆者は大きく3点あると考えます。

1.自分の振る舞いが周囲にどのような影響を与えているかを客観的に理解する。
2.自分の価値観や傾向を知り、自分が何に反応しやすいのかを知る。
3.自分の心の動き(感情)を知り、感情の暴発を防ぎ、相手との関係の維持に努める。

つまり「自己認識」「自己規律」こそが、“受け手のコミュ力”を高める出発点になります。

自己認識力・自己規律力とも低いと、他人からは次のように映ります。
「あの人は自分のこと分かってないよね」
「なんかあの人上から目線だよね」
「言っていることは正しいんだけどな…」
「すぐジャッジしてくる」
「すぐキレて、感情任せに言うから、近寄りがたい」
(実は筆者も過去はそう言われていました…)

「自己認識」と「自己規律」の旅に終わりはありませんし、小手先のテクニックとは異なり簡単に身に着くものではありません。
ある種「人間力」的なものも問われます。

ただ、コミュニケーションとは情報のやりとりだけではなく、心のやりとりでもあるからこそ、その人の「あり方」も問われるわけです。

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