今週からは少し趣向を変えて、私自身の人生に影響を与えた書籍を紹介してまいりたいと思います。
今回ご紹介する本は「人を動かす質問力」(谷原誠 著)です。
https://www.kadokawa.co.jp/product/200901000161/
タイトルだけ見ると心理テクニックめいた本に見えますが、そんなことはありません。
かなり本質を捉えた本と思います。
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人間は誰しも程度の差こそあれ「自尊心」というものを持っています。
それは、「自分を大切に扱ってほしい」「軽視・無視・敵視されたくない」という思いです。
だからこそ、相手の意見がどんなに論理的に正しかろうと、
上から目線であったり、
言い方がきつかったり、
こちらの意見を聞かずに一方的だったりすると、
多くの人は、なかなか素直に受け止められません。
「言っていることは分かるけど…」
となれば、自発的に行動を起こそうとは思えないものです。
私たちの自尊心(プライド)がそれを妨げているのです。
つまり、「自分の尊厳を軽視する人の言うことは聞きたくない」という思いです。
するとこんな声も聞かれます。
「そんな余計な自尊心(プライド)なんて捨ててしまった方がいい。」
確かに、筆者もその意見には賛成です。
見栄・虚栄心のような自尊心(プライド)は捨ててもいい、
でも、人として失ってはいけない矜持(プライド)は大事にしたい…というのが筆者の思いです。
しかし、それを相手に求めて変わるほど、人は簡単ではありません。
だからこそ、私たちが他人と関わるときは、「相手には自尊心がある」という前提で関わった方が賢明です。
程度の差こそあれ、人は「自分を尊ぶ」生き物です。
つまり「自分が考えたこと」「自分で思いついたこと」「自分で決めたこと」については、人は喜んで従おうとします。
反対に、他人にとかく言われたこと、命令されたことについては、自尊心がどうしても抵抗感を示します。
人は「説得」では動きません。
人は「納得」で動きます。
では、相手に動いてもらいときはどうすればいいの?
それこそが「質問」です。
人は、「質問」に対して「考える」習性があります。
たとえばこんな質問です。
「小さい頃、嬉しかった想い出は何ですか?」
いかがでしょう?
ちょっと思いを巡らせてみましたか?
これが、対話の場面で質問されたら、もっと思いが巡るはずです。
自分で考える → 自分で言葉にする → 自分の言葉によって納得する
それが「質問」による「納得」のメカニズムです。
ただし、質問には1つ注意点があります。
質問する人が「自分の思い通りに相手を動かしたい」と目論んで、操作的なテクニックに走ると、相手によっては「見抜かれる」ということです。
それは「誘導的な質問」となって表れます。
たとえば、
「なんで宿題をやらなくちゃいけないと思う?」
「なんでこの目標を達成しなくちゃいけないと思う?」
といった質問です。
これは明らかに質問する側の「作為」が含まれています。
これは「悪い質問」の代表例です。
また、
「なぜやらなかったの?」
「なぜあそこでミスしたんだ?」
というような、「Why+否定的な質問」は、相手によっては自尊心を傷つけられているように感じるので注意が必要です。
良い質問とは、
①ニュートラル(聴き手の思惑が入っていない)
②シンプル(短い質問)
③オープン(5W1H)
です。
たとえば、以下のような質問です。
「今日一日、うまくいったことはなんですか?」(What)
「その理由はなんだと思いますか?」(Why)
「明日も良い一日にするには?」(How)
そして、話し手から出た言葉を否定せず、ジャッジせず、遮らずに傾聴することによって、
話し手はゆっくり安心して自由に考え、自由に言葉にすることができます。
だから、自分の言葉によって自分を動機づけることにつながるわけです。
それが、「人を(自発的に)動かす質問力」の要諦です。