【第110号】人間万事塞翁が馬

「人間万事塞翁が馬」

中学校1年生のとき、担任の先生から届いた年賀状に書いてあった言葉です。
当時はその意味がまったく分かりませんでした。

「先生、自分に何を伝えたいんだろう?馬が好きなのかな。」

くらいにしか思っていませんでした。(が、なぜか年賀状は記憶に残っています。)

 

ですが、今となってはこの諺の意味を身に染みて感じます。

この諺の意味は次の通りです。

――
人生で遭遇することの吉凶や禍福は、変転きわまりなく、容易にさだめがたい。
一見悪いことがよいことにつながり、逆によさそうなことが悪しきことにつながっていく。
――

筆者自身の人生を振り返ると、まさにその連続でした。

当の年賀状をもらった年の3月、筆者のふざけた態度に当の担任の先生が激昂し、思いっきり殴打され大けがを負ったのです。
しかし、当時の筆者は、それを機に自身の振る舞いを見直し、生活態度を改めました。
すると、学業成績がみるみる上昇しました。
そんな筆者を、当時の友人たちは「栄木の成績が良くなったのは、先生に殴られたからだ」と揶揄してきました。
(それはまるで「殴られて脳の構造が変わった」かのような言われようでした…。)

まさに塞翁が馬です。

時は流れ、旅行会社に入社してから「営業だけはやりたくない!」と思っていたにも関わらず、営業をやる羽目になってしまいました。
しかし、そこで培った「営業力」は、独立してから「業を営む力」につながっています。

 

「あの時があったから、今の自分がある」

 

このように「凶」から「吉」となった例は枚挙に暇がありません。

 

一方で、反対に「吉」と思える経験が、実は「凶」のはじまりだった…というのは、パッと思いつきにくいものです。

ですが、このような経験というのは、実は足元に転がっています。

 

「何かを手に入れたとき」というのは要注意です。

 

何よりも、驕り・慢心・過信など「気の緩み」が生じがちだからです。

筆者自身、自覚していることがあります。
当時、キャリアアップの転職が決まり、「前職での成功体験」を糧に、順風満帆・意気揚々とした気持ちで新天地に乗り込んでいきました。
しかし、最初の年は失敗の連続でした。
自尊心は粉々に打ち砕かれ、若くして椎間板ヘルニアを患いました。
お客様に最初に与えてしまった悪印象を払拭するにも数年かかったように思います。

 

ですが、その失敗経験がまたきっかけとなって、吉へと転じていきます。
「禍⇔福」「吉⇔凶」
人生、その繰り返しです。
これは、筆者に限らず、読者のみなさまも同じことと思います。

 

ですが、「禍」「凶」を望んでいる人は誰一人いないと思います。
できれば、「福」「吉」であることを望むでしょう。

 

そこで、筆者自身、原体験から一つ得た教訓をご紹介します。

今この瞬間でいえば、筆者は「順風」の状況にいるかもしれません。

ですが、「そんな時こそ最大の注意を払う」というものです。

それは、「失敗しないようにする」「手堅くいく」というものではありません。

むしろ、その逆です。

「順風の時こそ、守りに入るのではなく、挑戦する。」というものです。

 

それはなぜでしょう?

順風な状態は、すなわち「安定の状態」でもあります。
一方、安定でいると、「今の状況を保ちたい」という思いから「守り」に入り、
失うことへの恐れから、思い切って挑戦できなくなる…ということも往々にしてあります。
そして、挑戦しないでいると、だんだんと「迷い」が入り込んできます。
すると、「安定を求めるあまり、不安定になる」というパラドックス(逆説)が生じます。

それが、様々な場面での「逆転現象」を生みます。

これは、スポーツの試合をはじめ、あらゆる場面で見られる現象です。

「成功の反対は失敗ではなく、挑戦しないことである」

世界の発明王トーマス・エジソンの言葉です。

「少しでも安心したい」
「少しでもラクになりたい」
「失敗したくない」

「凶」への入り口は、もしかしたらそんな「安定」を求める私たちの心にあるのかもしれません。

安定を求める心は、挑戦心を削ぎ、自らの持つ可能性を狭めてしまうことになります。
それが、「変えたくても変えられない」という身動きの取れない状況に自らを追いやってしまい、自分を苦しめることに繋がってしまいます。

だからこそ、「安定に甘んじず、挑戦を止めず、変化し続ける」という姿勢を保つ。

それが、筆者がこれまでの人生で得た教訓です。

成功、失敗…「結果の良し悪し」に私たちの心はとかく左右されがちです。
ですが、本当に大事なことは、結果の良し悪しはともかく、挑戦の姿勢を崩さないことにあると考えます。
その姿勢を持ち続けている限り、本当の失敗はありません。

関連記事

TOP