【第112号】たった一つの行動を変える大変さ

筆者がコミュニケーション系の研修講師を務めていたときのことです。

ある受講者が、研修修了後の行動宣言として「毎日縄跳びをする」と言いました。

周囲も筆者も、一瞬キョトンとしました。

「なぜ、コミュニケーションの研修で縄跳び?」

ただ、その後の話を聞いて納得しました。

彼はこう続けました。
「自分は、これまで『挨拶をする』をいうことを行動宣言として実行してきたけれど、どうしても元気が出ないと挨拶が億劫に感じる時があった。思えば自分は、最近座ってばかりで足腰が弱っていた。まずは、足腰から鍛えて元気な挨拶ができるようにしたい。」

「毎日の縄跳び ⇒ 気力 ⇒ 元気な挨拶 ⇒ 周囲と良好なコミュニケーションが取りやすくなる」という図式です。

自身のそもそもの原因まで立ち返って考えた上での行動宣言に思いました。

「毎日縄跳びをする→元気な挨拶につなげる」という宣言自体は、社会人にとっては一見バカバカしいものに映るかもしれません。
また、会社は多額の投資をして研修を開催します。
ですので、もっと高いアウトプット(成果物)を求めることになります。
「そんな当たり前のことに気づいてもらうために、貴方に投資をしたわけではない。もっと深い専門性と高い視座を身に着けてほしい。」と。

ですが、多くの組織は一人ひとりがたった一つの行動を変えられないために、コミュニケーション上の問題が生じるのも事実です。
自分を変えずして、他人のせいにしたり不満を言うことで組織は停滞していきます。

一方で、「毎日縄跳びをする」という行為そのものは、それまで「縄跳びをしてこなかった人」にとっては相当ハードルの高い行為です。
なぜなら、今までの人生で365日×〇〇年間やってこなかったことを、明日から毎日続けるわけですから。
180°ガラッと行動様式が変わることになります。

今までやってこなかったことを、始める。続ける。
今までずっと続けてきたことを、やめる。

これは、生半可な気持ちではできません。

たとえば、コミュニケーション上のテーマでよく出てくる行動宣言として、
「人の話を最後まで聞く」
「あいさつをする」
「ひと声かける」
というものが出てきますが、これらも今までやってこなかった人にとっては極めてハードルの高い行為です。

その人の持つプライドであったり、慣れ親しんできたものと別れを告げる必要があります。
それに耐えられなくて、多くの人たちは今まで通りの、やり慣れた行動様式を続けるわけです。

それだけ、「たった一つの行動を変える」ということは、私たちが思っている以上に大変なことであります。

まさに「言うは易く行うは難し」です。

ただ、このたった一つの行動を変えることが、自身の人生を変えるきっかけにもなります。

 

電車内を見渡すと、ほとんどの人がスマホに没頭しています。
中には、本当に自分にとって必要な情報を得るためにスマホに触っている人もいるかもしれません。
ですが、中には「本当は本を読みたい。でも、ついスマホに触ってしまう。」という人もいるかもしれません。

そんなモヤモヤこそが、行動を変えて、人生を変える出発点になります。

「電車で本を読む」という行動を365日続けると、自分にとってどんなポジティブな変化が訪れるでしょうか?

「本当はこうしたくない」と思う行動を遠ざけて、
自分にとって望ましい行動を一つ一つ取り入れていく。

それが、自分も知らない未知の自分と出会い、人生を好転させていく秘訣だと、筆者は実感しています。

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