先日、あるお客様から質問をされました。
「栄木さんが仕事をする上で大事にしていることは何ですか?」
少し思いを巡らしたあと、あるキーワードを思い出しました。
それは「きっぷ1枚」を大事にすることです。
前提の話をしますと、筆者の社会人生活のスタートは、旅行会社の学校営業担当でした。
私が最初に担当した地域は、新潟市の中心部(支店)から片道90分はかかる福島県との県境(阿賀地区)の山あいの学校でした。
それこそ、1学年30人に満たない学校もありました。
「採算」という視点からすると、実入りは少ない地域です。
それでも当時の上司は、「こういう地域ほど人を大事にしてくれる。だから、営業担当として一人前になるためには打ってつけの場所だ。」と考え、筆者はこの地域を任されました。
上司からは、「栄木、お客様からの『きっぷ1枚』の申し込みを大切に扱うんだぞ」と幾度となく言われました。
そもそも旅行会社は薄利多売とも言われる業界で、その中でもJR券は利益率の少ない商品でした。
利益だけで言えば、1000円にも満たない金額です。
往復に時間がかかり、人数が少ない地域を担当して、採算が取れない商品を扱えば、当然、営業成績は上がりません。
それでも、新入社員の私に「売上」のことにほとんど口出しをせず、営業担当としてお客様に向き合う姿勢について口酸っぱく指導された記憶があります。
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お客様は、その担当者を信頼していないと仕事をお願いしようとは思わない。
それは、たとえ「きっぷ1枚」であってもだ。
だから、仕事を依頼してくれることがどれだけありがたいことか。
それを意気に感じ、依頼いただいたことに対してきちんと応えていく。
そうすることで、信頼はさらに高まる。
それが、結果として大きな仕事にもつながっていく。
――
この教えは、20年以上経った今、筆者の血肉になっています。
色んなお客様はいましたが、この教えは道理的にも間違ってはないと思います。
取り扱う仕事が増えて、依頼をいただくことが当たり前になると、
忙しさや余裕のなさのあまり仕事の原点を忘れそうになる時もありますが、
そんなときこそ、「きっぷ1枚」の感覚に立ち返ろうと思います。
大きく(メジャーに)なったときこそ、それに反比例するように、小さなこと(マイナー)を大事にしなければな…と思います。
それは、仕事でも人間関係でも日常でもしかりです。
そう考えると、私を育ててくれた上司(小出課長)と、阿賀地区の先生方(お客様)には、心から感謝しています。
そして、筆者自身も仕事の悩みにぶち当たる若者に、同じようなことを伝えています。
世の中、仕事を目に見える数字だけで評価する風潮にあるからこそ、目に見えないものを大事にしたいと思う今日この頃です。