人と組織の”葛藤”物語

数字と物語のあいだで ― アンケートデータを読む

IK!IK!が提供する研修後の受講者アンケートデータを分析していると、数字と物語の両方を読むことになります。集計結果として表れる研修満足度などのスコアや割合は数字で、受講者のみなさまが自由に書き込んでくださるコメントは物語です。

数字は、受講者のみなさまの研修に対する評価傾向を端的に示してくれます。研修の満足度の平均値や、肯定的な回答の割合などは、全体像をつかむうえで役立ちます。ただ、数字だけを眺めていると「この研修は良かった」「そうでもなかった」といった表層的な評価にとどまってしまいがちです。そこに個々の背景や理由までは映りません。

一方で、物語としてのコメントには、受講者一人ひとりの思いや体験が込められています。短い言葉の中に、研修を通してその受講者の方が何を学び、何に気づき、あるいは何に戸惑ったのかが見えてくることがあります。ですが、個別の声はどうしても主観的で、全体の傾向を代表しているとは限りません。

数字だけでは不十分で、物語だけでも偏りがある。だからこそ両方を読み、照らし合わせることに意味があるのだと思います。たとえば「全体として研修への満足度は高いが、一部に業務との関連性が見えにくかったという声がある」といった見方は、数字と物語を組み合わせてはじめて浮かび上がります。

 仕事を通じて私が大切にしているのは、この数字と物語の「あいだ」を見つめることです。数字の裏側に潜む物語を想像し、物語の背後にある数字の傾向を探る。数字と物語を行き来し、どちらの情報も丁寧に組み合わせていく。その積み重ねの中に、よりよい研修をつくるためのヒントがあると感じています。

数字と物語は、対立するものではありません。むしろ、お互いを補い合う存在です。数字があるから物語に説得力が生まれ、物語があるから数字に温度が宿ります。受講者のみなさまがくれた数字と物語を大切にし、学びや気づきにつながる研修づくりの一助になりたいと考えています。