社会人人生の中で、私は多くの素敵な先輩方に出会いました。
本当に感謝してもしきれません。そして、その先輩方から頂いた数々の言葉が、私の礎になっています。落ち込んだとき、迷ったとき、いつも思い出しては支えられてきました。
今日は、そんな「言葉の宝物」のひとつをご紹介したいと思います。
時短勤務時の悩み
子どもがまだ小さく、「時短勤務」で働いていたころのこと。
毎度、夕方の会議が盛り上がってきたところで「お先に失礼します……」と、コソコソ退席しなければならない。そんな自分が情けなく、悔しくて仕方ありませんでした。
よりによって重要な会議の日に限って、子どもが熱を出す。保育園から呼び出しがかかる。
「仕事の一番大事な場面に、私はいない」――そんな現実に、何度も心が折れそうになりました。
「私の存在って、何なんだろう……?」
制約のある働き方の中で、自分の存在感に不安を感じていた時期でした。
メンターのありがたい一言
あまりの苦しさに、素敵な先輩の一人である社外の女性のメンターに相談をしました。
私の愚痴っぽい話を熱心に聞いてくれた後、その方はこうおっしゃいました。
「存在感って、居る時間のことではないのよ」
「思い浮かべてごらんなさい。その人がそこに居なくても、まるで居るかのようにチームが動くことってあるでしょ。『ああ、あの人ならこうするな、こう考えるな』って。そういう人になればいいのよ。そういう人こそ“本当に存在している人”なのよ。」
その言葉が胸に響きました。
私は「実際にそこに居ること」ばかりにこだわっていたのです。
“実在”から“存在”へ
限られた時間の中で、自分がどう過ごすか、どう関わるか――
メンターの言葉で、視点が一気に変わりました。
当時、私は課長職でしたが、時間の制約上、部下に仕事を任せることも多くありました。
以前は「ここまでやったから、あとはよろしく」と引き継ぐだけでしたが、そこに“想い”を添えるようにしました。
「この仕事はこういう目的で進めたい」
「私はこういう考えで、こう判断している」
具体的な指示だけでなく、自分の価値観や方向性を共有する。
それが、私が不在のときでもチームが自走し、判断の軸がぶれないことに繋がっていきました。
“存在感”は、居る時間ではなく、”自分の考え方が周囲に息づいているかどうか”なのだと気づきました。
働き方に制約があることは、決してマイナスではありません。
むしろ、限られた時間だからこそ、自分が何を残せるかを意識できる。
その意識が、仕事の質も、人との関係も、確実に変えていくように思います。
存在感とは、居る時間ではなく、残す影響のこと。
自分がその場を離れた後も、「あの人ならこう考える」と思い出される。
そんな“見えない存在感”こそ、本当のリーダーシップなのではないかと、今では思っています。
