人と組織の”葛藤”物語

「背伸びをすれば、背が伸びる」

「女性活躍推進」という言葉を耳にする機会は増えたものの、日本社会ではその歩みはまだまだ遅れています。法律や制度は整ってきたものの、なお残る課題のひとつが、女性自身が抱える“心の壁”。時代が変わっても、そう簡単には取り払えないものだと感じます。

このブログでは、私自身の経験談――とくに失敗談を交えながら、“心の壁”を取り除くヒントになればという思いで綴っていきます。肩の力を抜いて、でも確実に一歩を踏み出すために。気負わず、楽しみながらキャリアアップしていける女性が一人でも増えたら、こんなに嬉しいことはありません。


昇進を断った、かつての私

少し恥ずかしい話ですが、私はかつて「課長昇進」のチャンスを自ら断ったことがあります。

当時は係長として日々奮闘していたものの、失敗も多く、反省ばかり。そんな日々のなかで、「自分には管理職なんて無理」とすっかり思い込んでいました。昇進には担当役員との面談がありましたが、その場で私はこう言ってしまったのです。

「私には無理です。自信がありません」

今思い返しても、本当にもったいない話です。せっかくのチャンスを、自分から手放そうとしていたのですから。面談を用意してくださった役員も驚き、落胆されたことでしょう。普通なら「今回は見送ろう」と判断されても不思議ではありません。

でも、その上司は違いました。今でも心から尊敬しているその方は、私にこう言ってくれたのです。

「立場が人をつくる」

その言葉に背中を押され、私は課長職にチャレンジすることを決意しました。やってみると、少しずつ自信がつき、経験が積み上がり、自分に足りない部分を補う方法も見えてきました。

今になって思うのは、「最初から完璧にこなせる人」なんてほとんどいない、ということです。むしろ、ポジションに就いて、もがきながら学び、その役割にふさわしい自分へと成長していく。そのプロセスこそが自然な姿なのだと思います。

大切なのは、自分を冷静に見つめ、強みと弱みを理解し、不足を補いながら一歩踏み出すこと。私が逃げようとしていたのは、その「最初の一歩」でした。

もちろん、チャレンジの先には困難や葛藤もありましたが、それ以上に得られた学びや成長は計り知れません。

今度は、私があの言葉を贈る番

その後、部門長となり、今度は私が部下に昇進を伝える立場になりました。すると、かつての私と同じように、「自信がない」「できるか不安です」と口にする部下が何人も現れました。そして不思議なことに、今のところ全員が女性です。

おそらく、「自分がその立場に就くイメージが湧かない」のだと思います。女性管理職のロールモデルがまだまだ少なく、結果として完璧を求めてしまう傾向があるのかもしれません。

だからこそ、私は彼女たちに伝えます。

「背伸びをしていれば、背が伸びるよ。気負わずにね!」

かつて私がもらったこの言葉を、今は私が贈る番です。迷っている誰かの背中を、ほんの少しでも押すことができたら。それが私にできる、ささやかな恩返しだと思っています。