先日、家の近くで秋祭りがありました。
秋祭りは「だんじり」が通り、朝から太鼓の音と掛け声が響き渡り、いつもの街がまったく違う表情を見せます。
普段は駅ですれ違うだけの人たちが、沿道で手拍子を打ち、子どもを肩車しながら声援を送っている。
お揃いの法被を着た人たちが息を合わせてだんじりを引く姿を見ていると、「この街にも、こんなに人がいたんだな」と思うほどです。
顔見知りでなくても、自然と笑顔で会釈を交わし、知らない人同士でも拍手が起きる。
あの瞬間は確かに、人と人とがつながっていました。
面白いのは、その非日常が終わると、翌日にはまたみんな何事もなかったように電車に乗っていくことです。
きっと、会社では上司と部下として、あるいは取引先として、また日常の顔に戻る。
でも、ほんのひとときでも、同じ空気を感じ、同じ方向に力を合わせる時間があったということ。
それだけで、不思議と街全体が少し温かくなったような気がします。
人事の仕事をしていると、組織の中でも似たような瞬間を感じます。
普段は立場や部署が違う人たちが、仕事やプロジェクトで同じ目的に向かって語り合う。
会議、飲み会、社内イベント、研修——どんな形であっても、「人が集う場」には人の心を少しやわらげる力があります。
たとえ翌日にはまた、それぞれの役割に戻るとしても、心でつながることで、ふとした協力や声かけにつながっていくことがあります。
だんじりを引く人たちの息の合い方や、沿道の一体感を見ていると、組織も本来こうありたいと感じました。
シンプルでありながら、その積み重ねが、組織に人の温度を取り戻していくのだと思います。
