“火が灯る” 研修レポ

「頭ではなく、心が動いた日」ー管理職研修の現場からー

先日、某大手企業の管理職の方々を対象に、「人財マネジメント力向上」の研修を行いました。
一日を通して感じたのは、「人を動かす前に、自分を見つめ直す」という大切さです。
まさに、私自身が独立するきっかけにもなった、“気づきが人を変え、行動を生む”という想いを再確認する時間になりました。


「理解」ではなく「気づき」が起きた一日

アンケートは4段階評価。結果は驚くほど高く、

  • 期待に沿う内容だった:平均3.9
  • 行動につながる学び・気づきを得られた:平均3.9
  • 講師の運営:平均4.0(満点)

数字以上に印象的だったのは、自由記述の言葉です。

「自己認識がいかに足りていないか痛感した」
「“聴く”つもりで“裁いていた”自分に気づいた」
「『相手を動かす』より、『自分の余白をつくる』方が難しい」
「部下の成長を願いながら、安心を奪っていたかもしれない」
「自分語りをしない、という言葉が刺さった」

「学んだ」よりも「気づいた」という言葉が圧倒的に多く、
頭ではなく心が動いた研修になったことが伝わってきました。


“痛み”が行動に変わる「IK!IK!式 360°アンケート」

今回、特に反響が大きかったのが「IK!IK!式 360°アンケート」です。
上司・同僚・部下など複数方向からの声を受け取り、
「どんな場面でそう感じるのか」「その行動が周囲にどんな影響を与えているのか」まで具体的に記されています。

「意見を求めているようで、正解を探させている感じがする」
「チームの失敗を一人で背負おうとしている姿勢が、逆にメンバーの挑戦意欲を下げているように感じる」
「素早く指示を出す前に、相手の“迷い”を待てたら、もっとチームが動きやすくなると思う」
「忙しそうなときほど、話しかけるタイミングをあきらめてしまう」
「言葉のトーンが冷静だからこそ、距離を感じることがある」

こうしたコメントを読んだ瞬間、多くの受講者が息をのんでいました。
“思い”と“伝わり方”のギャップを、初めて数字と具体的な言葉で突きつけられるからです。

多くの360°フィードバックは、
「リーダーシップがある/ない」「傾聴できている/いない」など、点数での評価にとどまりがちです。
それでは“気づき”ではなく、“採点”で終わってしまいます。
さらには、部下から評価されること自体が「上」からに感じてしまい、煮え切らない感情だけが残ることもあります。(私もその一人でした。)

ですが、IK!IK!の360°アンケートは違います。
本人が「なぜそう見られているのか」を理解できるよう、
“場面”と“影響”という文脈で可視化します。
だからこそ、

「最初は否定された気がして苦しかったけど、“そう見える理由”を考えたら、確かにその通りだった。」
「評価じゃなく、ちゃんと“見てくれている”と感じた。」
「『変わらなきゃ』じゃなく、『変われるかもしれない』と思えた。」
「これを見て初めて、自分の口ぐせや表情のクセに気づいた。」
「(フィードバックは)痛かったけど、不思議と前向きな気持ちになった。」
という感想が生まれます。

受け取る痛みは大きいです。
ですが、その痛みの先にあるのは行動を変えるエネルギーです。


「わかる」で終わらせない設計

研修の現場ではよく、

「言っていることはわかる。でも、実際の現場でやるのは難しい」
という声を耳にします。

多くの研修が“理解”で止まってしまうのは、実践への接続が設計されていないからです。
IK!IK!ではそこを徹底的に意識しています。

自分の思考や感情のクセを見える化し、
360°アンケートで他者からの視点を受け止め、
最後に「明日から何を変えるか」を自分の言葉で宣言する。

「1on1を“やらなきゃ”って思ってたけど、まずは“相手にちゃんと興味を持つところから”始めてみます。」
「沈黙が怖くてすぐ埋めてたけど、次は“黙って待つ”をやってみたいです。」
「これまでは“できていないこと”ばかり言ってました。次は“頑張ってる部分”を先に伝えます。」
「質問を考えて臨むんじゃなくて、相手の言葉をちゃんと聞いて、その場で返せるようになりたい。」
「部下を動かすより、まず自分が“聴く姿勢”で空気を変えたい。」

こうした声が自然に出てくる時点で、すでに行動変容が始まっています。


独立の原点も、ここにある

私が独立を決めたのも、まさにこの「気づきから行動への変化」の必要性を強く感じたからです。
知識やスキルを学ぶ研修が“頭の理解”を支えるものだとすれば、
私たちが目指しているのは“心が動く瞬間”をつくること。
その小さな揺らぎが、次の行動を生み出します。

今回の研修でも、その光景をいくつも目にしました。
講義の終わりに、受講者の表情と柔らかくなり、
「明日やってみます」と笑顔で話してくださいました。
その瞬間に、「人は何歳からでも変われるんだ」と改めて感じました。

おわりに

人は“理解”ではなく、“納得”で動きます。
そして、その納得を生むのが、気づきの力です。

誰かの気づきが、次の誰かの行動を変え、
その行動が、また新しい気づきを生む。
その循環を広げていくことが、私たちIK!IK!の仕事であり、
私がこの仕事を続ける理由でもあります。