栄木の”ひとり言”

【第215号】雑談力

「雑談が苦手」「何を話していいか分からない」

そんな声をよく耳にします。
文字ベースのコミュニケーションが主流になった今、会話に自信が持てないのも無理はありません。

そんな中、ある企業様から「雑談力向上」に関する研修を依頼されました。

筆者をよく知る人なら、「いやいや、あなたこそ雑談下手でしょう」と思うかもしれません。
実際、“おやじギャグ”で場の空気を一瞬で凍り付かせることを得意とし、博識というわけでもないのでトークネタに困ることも多々あります。
そんな筆者がなぜ雑談力に関する研修を引き受けたのでしょうか。

その理由を説明する前に、ちょっと想像してみてください。

博識で話術に長けた人が、次々と面白い話を繰り出す。
でも聞き手が「ふーん、あっそう。」と興味ゼロだったらどうでしょう。
話し手は「この空気に耐えられない…」と心の中で泣きたくなるかもしれません。

逆に、特別に話がうまいわけではない人でも、聞き手が興味津々で「へぇ!それでそれで?」なんて前のめりに聞いてくれたらどうでしょう?
話し手は気持ちよく話を続け、「伝わっているな」と感じるでしょう。

結局のところ、雑談は話し手の能力ではなく、受け手の姿勢が9割を占めるのです。

最近はSNSなどで「発信力」がもてはやされていますが、本当に大切なのは「受信力」を高めることなのではないでしょうか。

受信力が低いと、相手の話の途中でスマホをいじったり、いつの間にか自分の話にすり替えたりするものです。
でも、受信力が高い人は、相手が話したいことを引き出し、一緒に面白がり、適切な相槌を打つ。
話し手は「この人、めちゃくちゃ聞いてくれてる!」と感激するわけです。

雑談の目的は、「会話を通じた相互理解の促進」にあります。
そう考えると、「雑談力を高める」とは「良い受け手」になることにあります。

トークスキルを鍛えるのは一朝一夕にはいきません。
ですが「良い受け手」になることは、心がけひとつで今日からでも実践できます。

例えば、「なるほど」だけでなく「なるほど、それって〇〇ってことですか?」と少し踏み込んでみる。
相手の言葉をオウム返しして「へぇ、〇〇なんですね」と返してみる。
話が終わりそうになったら「それで?」と続きを促す。
ほんの少しの工夫で、会話は驚くほどスムーズになります。

「話し手9割、受け手1割の人」と「話し手1割、受け手9割の人」、どちらの人と長く付き合いたいでしょうか。
そして、あなた自身はどちらのタイプでしょう?

雑談力を高める第一歩は、「良い受け手」になること。
今日からさっそく試してみてはいかがでしょうか。
もしかすると、あなたの「ふーん」が「もっと聞かせて!」に変わるかもしれません。

…と、ここまで書いた筆者ですが、妻から「あなたこそ『ふーん、あっそう。』みたいに、いつも私の話あまり聞いてないよね」とツッコミが入りました。
どうやら、妻からしてみたら、筆者こそ「話し手9割、受け手1割の人」だったようです…。

さて、筆者も今日から「受け手9割」を実践してみようと思います…(完)