人と組織の”葛藤”物語

【第10回】SF 強みの裏側 ― 「やりすぎゾーン」にこそ、成長のヒントがある

“強み”が暴走するとき

ストレングスファインダーを通して、これまで9つの資質を紹介してきました。

どの資質にも魅力があり、「あ、これ自分だな」と感じる瞬間があります。

でも実は、強みには“やりすぎゾーン”があるんです。

たとえば私のトップ資質「最上志向」。

ロールプレイングゲームでいうと、主人公のレベルを99まで上げてからでないとフィールドに出たくないタイプ。「まだ技がそろってない」「防具が最強じゃない」と気になって、延々とトレーニングに時間をかける。

気づけば敵が弱すぎて、あっさり勝って飽きてしまう(笑)。

「完璧にしたい」が行きすぎて、「挑戦の面白さ」を逃してしまう。

これがまさに、最上志向の“盲点ゾーン”です。

過去に登場した他の資質も、“やりすぎ”は魅力の裏返し

戦略性の人は、頭の中で何十通りもの道筋を描きすぎて、かえって複雑にしてしまうことがあります。「どのルートでも行ける」と思うがゆえに、決めきれない。でもそれは、「より良い未来を届けたい」という思いの強さの裏返し。

調和性の人は、場の空気を大切にしすぎて、自分の意見を飲み込んでしまうことがあります。静かな優しさが魅力なのに、それが“我慢”に変わる瞬間がある。でもその思いやりがあるからこそ、チームは安心して意見を交わせる。

ポジティブの人は、どんな状況でも「なんとかなるよ!」と励ましてくれる。ただ、その明るさで自分の本音を隠してしまうことも。明るさは大事。でもたまには「今日はちょっとしんどいね」と言える時間も必要です。

公平性の人は、ルールや筋を通すことに誇りを持っています。でも、正しさを貫くあまりに柔軟さを失うこともある。そんな時は「人の気持ちは?」と一言添えるだけで、優しさのある正しさに変わります。

成長促進の人は、相手の伸びしろを信じすぎて、つい“手塩にかけすぎる”ことがあります。つい手を出したくなる気持ち、すごくわかります。でも、成長の本質は「任せて見守る勇気」。待つことも支援のひとつです。

そして原点思考の人は、過去を大切にするあまり、「昔はこうだった」と過去を追い求めすぎることがあります。でも、本来の原点思考は“懐古”ではなく“翻訳”。過去を今にどう活かすか、そのつなぎ方に価値があります。

どの資質も、やりすぎるほどに没頭できるのは、それだけ自分らしさが濃い証拠です。

“暴走”は才能がしっかり動いているサインなのです。

盲点は止めるものではなく、“整える”もの

大切なのは「やりすぎないように抑える」ことではなく、どう整えるかを知ること。

最上志向なら、「完璧より挑戦」を選ぶ。

戦略性なら、「すべての選択肢」より「今いちばん意味のある選択」を。

成長促進なら、「教える」よりも「信じて任せる」を。

それぞれの盲点は、自分の才能をしなやかにするトレーニング場です。

おわりに:やりすぎもまた、あなたらしさ

強みは、長所の中に欠点が混ざっているようなもの。でも、その“混ざり方”こそが、その人の味です。

あなたの資質も、もしかしたら今日、やりすぎゾーンに入っているかもしれません。

でも大丈夫。それは「才能がちゃんと動いているサイン」。

強みをうまく“整えながら使う”ようになると、

キャリアも人間関係も、ぐっと柔らかく、深くなっていきます。