
「どうしたら希望の企業から内定をもらえますか?」
就活生によく聞かれる質問です。
確かに就職には運やタイミング、スキルや経験も関係します。
でも、どんなに能力があっても、どんなに面接対策をしても、ある一つの要素が欠けていれば、採用されにくいものです。
それは「真摯(しんし)さ」です。
経営学の大家、ピーター・ドラッカーも「組織において最も重要なものは真摯さである」と言っています。
でも、そもそも「真摯さ」とは何でしょうか?
よく「真面目さ」「誠実さ」と混同されますが、実は違います。
真面目さ
① コツコツ努力し、責任感を持ち、ルールや仕事に対して誠実に取り組む。
② ただし、「本質を考えるかどうか」は人による。(必ずしも「なぜ?」を深く考えるとは限らない。)
③「態度・行動の勤勉さ」を重視。
誠実さ
①倫理的で、道徳観を持ち、嘘をつかず、ルールを守る。
②他者や社会との約束・規範に対して一貫性を持つ。
③「内面の誠実さ」と「外部からの信頼」を重視。
真摯さ
①「そもそもなぜ?」を考え、目的や意義を理解したうえで行動する。
② 形式的にルールを守るのではなく、本質を捉えて行動する。
③ 「自らの態度や姿勢」に向き合う姿勢を重視。
たとえば、サークルで「もっと参加者を増やせ」と言われたとします。
真面目な人は、 「言われた通りやらなきゃ。」 と指示を忠実に守り、SNSで拡散するでしょう。
誠実な人は、「しっかり広めることが自分の責任だ。」 と指示を守りながらも、なるべく丁寧に広めようとするでしょう。
真摯な人は、「なぜ増やす必要があるのか? 増えたらどんな価値があるのか?」 と目的を理解した上で、自分なりに最適な方法を考え、必要なら指示を超えたアプローチを取るでしょう。
アルバイトでも違いが出ます。
真面目な人は、 「マニュアル通りにやる。」と考え、 言われた通りの接客をし、ルールをきちんと守るでしょう。
誠実な人は、 「ルールを守ることが店のためになる。」と考え、 マニュアルを忠実に守りつつ、丁寧な接客を心がけるでしょう。
真摯な人は、「この店は何を大切にしているのか? お客様にとって最高の体験とは?」 と考え、お店の価値観を理解し、お客様の立場で考えながら、時にマニュアルに縛られない柔軟な接客をするでしょう。
では、なぜこの「真摯さ」が就職活動で重要なのでしょうか?
就活では、志望動機を聞かれます。
企業理念をどう解釈したかも問われます。
ですが、そこに「借りてきた言葉」しかなかったら、面接官にはすぐに見抜かれます。
一方で、「自分がこの会社で何を成し遂げたいのか?」を本気で考えた人の言葉には、説得力が宿ります。
面接官は、スキルや経験だけを見ているわけではありません。
「この人は、どれだけ本気でこの会社に向き合っているのか?」を見ています。
真摯さがある人は、企業の理念と自分の考えを結びつけ、納得感のある答えを生み出します。
では、どうすれば真摯さを磨けるのでしょうか?
① 「そもそも思考」を鍛える
普段から「なぜ?」を考える習慣を持つことです。
「なぜこの会社なのか?」「なぜこの仕事をしたいのか?」を、誰かに説明できるレベルまで掘り下げる。
ネットやAIで調べた答えではなく、自分自身の言葉で語れるまで考え抜くことが大切です。
② 「企業理念・社会・自分」のつながりを意識する
就活では「企業理念に共感しました」と言う人は多いですが、問題はその先です。
「だから自分はどう行動するのか?」を考えることが大事です。
企業の目指す未来と、自分の役割をどうつなげるのかを具体的に考えていくことで説得力が増します。
③ フィードバックを大切にする
自分の考えや行動が本当に適切なのか、周囲の意見を聞きながら軌道修正していくことも重要だろ考えます。
就活でも、エントリーシートや面接の内容を振り返り、第三者のフィードバックをもらうことで、より深い答えが生まれます。
真摯な人は、ただ「こんな仕事がしたい」ではなく、「この会社でどんな価値を生み出せるのか?」を考え抜きます。
だからこそ、企業も「この人と一緒に働きたい」と思うものです。
最終的に、企業が求めるのは「スキル × 人間性 × 価値観の一致」のバランスですが、どれだけ能力が高くても、どれだけ経験があっても、「本気で考えているかどうか」=真摯さがなければ、その魅力は伝わりにくいものです。
学歴やスキルよりも、「この人は真摯か?」という視点を持つこと。
就活を通じて、ただ内定をもらうのではなく、「自分がどう働きたいのか?」を本気で考えること。
それが結果的に、希望した企業との「最良のご縁」につながるのではないでしょうか。