栄木の”ひとり言”

【第213号】パーパス・クラフティング?

ここ最近、企業研修等で「ジョブ・クラフティング(Job crafting)」という言葉をよく耳にするようになりました。
(ここでは、「クラフト(craft) ≒ 創り上げていく」と捉えます)
自分の得意なことや興味に合わせて仕事のやり方を工夫し、より充実した働き方を実現する方法です。

「仕事は与えられるものではなく、自分で作るもの!」

この考え方は、とても前向きで魅力的に感じますし、筆者自身心がけていることでもあります。

ですが、自分のジョブ(Job)をクラフト(Craft)していった先に、誰もそれを必要としくれる人がいなかったらどうでしょう?

例えば、創意工夫して「自分らしい」絵画作品を提供し続けているのに、誰一人買ってくれる人がいない…そんな感覚です。

生成AIの急速な普及も、ジョブ・クラフティングに影響を与えています。
文章作成やデータ分析をAIが担う時代に、「自分らしい仕事の工夫」をしたところで、それがAIと競合してしまうなら、そもそもクラフトする余地がないという状況にもなりかねません。

「自分らしいキャリアを描く」

これもジョブ・クラフティングと似たような概念で、響きは良いのですが、いずれも「落とし穴」が存在します。

どんなに個人が工夫したり、自分らしいキャリアを描いてみても、それが会社や社会のニーズとズレていたら、本当の意味で「ジョブをクラフト」できません。
ジョブ(仕事)は、「個人のやりがい」だけで成り立つものではなく、「組織の目的」や「社会のニーズ」と結びつくことで初めて価値を持つのではないでしょうか。

そこで筆者が提唱したいのが、「パーパス・クラフティング(Purpose crafting)」という新しい視点です。

パーパス・クラフティングとは、単に仕事を楽しくするのではなく、「組織の目的」や「社会の課題」と結びつけながら仕事を再構築する考え方です。

例えば、過剰なストレスで苦しんでいる現代に生きる人に向けて、心を癒すような絵画作品を提供する…そんな感覚です。
「自分らしさ」はその後についてきます。

ジョブ・クラフティングが「個人のやりがい」にフォーカスするのに対し、
パーパス・クラフティングは「個人のやりがい」と「社会の価値」をつなげることで、より意義のある仕事を生み出すことを目指します。

パーパス・クラフティングは、こんな「問い」から始まります。

「今、世の中が困っていることって何だろう?」
「自分(たち)の手によって、世の中をどう創り上げていきたいだろう?」

当社IK!IK!は、「パーパス・クラフティング」を大事にしている会社です。
おおざっぱに言うと「日本の企業で働く人たちが元気がない…。だとしたら、自分(たち)の手によって、人が活きる社会にしていきたい!」という会社です。

そのためには社員は単なる業務の効率化ではなく、「この仕事がどのように顧客の成果につながるのか?」を意識しながら働くようにしています。
その結果、個人の工夫が会社全体の価値向上へとつながっていくと感じます。

ジョブ・クラフティングには多くの魅力があります。
ですが、それを「自分の満足」のためだけに使うのではなく、「組織や社会のパーパス」と結びつけることができれば、より大きな価値を生み出せるはずです。

「自分にとってやりがいのある仕事」だけでなく、「社会にとって意味のある仕事」。

日本を取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。
だからこそ、「パーパス・クラフティング」という視点が、明るい未来を実現する上でも大切になってくると筆者は考えます。