昨日飲んだ牛乳が、ほんのり甘く、コクがあっておいしいな……と思い、
ふとパッケージを見てみたら、 「ノンホモジナイズド」との記載がありました。
ノンホモジナイズドとは、牛乳を均質化せず、
成分をあえて完全には混ぜきらない製法のことだそうです。
そのため、時間が経つと表面にクリームが浮いてきます。
全部がきれいに混ざっていない。 ムラがある。
でも、それが「自然な状態」なのだそうです。
これを見たとき、
「あ、これ、組織にも当てはまるな」と思いました。
たとえば、バーガーチェーン店を思い浮かべてみてください。
どの店舗に行っても、 ほぼ同じ味、同じサービスが提供されます。
これは当たり前のようで、実はすごいことです。
そこに至るまでには、 数えきれないほどの試行錯誤があったはずです。
・焼き時間は何秒がベストか
・具材の置き方はどうすれば崩れないか
・接客の言葉遣いはどうすれば気持ちいいか
創意工夫と改善を重ねた結果、
「ほぼ完璧」と言えるマニュアルとシステムが出来上がりました。
つまり、マニュアルやシステムは、過去の努力の結晶です。
ただ、ここに少しだけ「皮肉」があります。
あまりにも完成度が高くなると、 人はこう思い始めます。
「書いてある(マニュアル)通りにやればいい」
「考えなくても、正解が用意されている」
その結果、 サービスの品質は安定しますが、
人の思考は、少しずつ使われなくなっていきます。
疑うこと。
立ち止まること。
「本当にこれでいいのか?」と考えること。
それらは、いつの間にか必要のないものになってしまいます。
均一化によって、一人ひとりが本来持っている“風味”が、 少しずつ失われていくのです。
これは、長い歴史を持つ組織でも同じです。
品質や安全を守るために、 ルールやマニュアルが磨き込まれていく。
それ自体は、間違いなく正しい進化です。
ただ、均一化が進みすぎると、
自分たちはそのつもりはなくても、
外から見ると、少しとっつきにくい組織に見えてしまうことがあります。
「自分たちのやり方が正しい」
「ここは完成されている」
そんな印象を、無意識のうちに与えてしまうのです。
筆者は昔から、こうした空気に敏感でした。
誰も疑いを持たず賞賛しているとき。
何かが完成されすぎているとき。
そこに、言葉にできない違和感を覚えてきました。
だからこそ、 組織に属しても、 仕事を愛しても、
どこかで「染まりきらない感覚」を大事にしてきたのだと思います。
(正直に言えば、それは決して楽な選択ではありませんでしたが…。)
一方で、ノンホモジナイズド牛乳は、 決して「混ざっていない」わけではありません。
ちゃんと同じパックの中にあり、 同じ牛乳として成立しています。
ただ、完全には混ざりきらない。
少し浮く部分がある。
そのおかげで、 味に深みが出る。
個性が残る。
組織も、きっと同じです。
染まりきってしまえば、思考が止まる。
一方で、異質でありすぎれば、調和を失う。
大事なのは、 混ざりすぎず、離れすぎない、その間。
組織との向き合い方も、 案外それくらいがちょうどうまくいくのかもしれません。
みなさまの職場は、「ホモジナイズド」でしょうか?
それとも「ノンホモジナイズド」でしょうか?
