栄木の”ひとり言”

【第276号】アスリートの不調の共通点からの”気づき”

アスリートの方々と1on1をしていると、よくこんな相談に出会います。

「スランプから抜け出せないんです」
「なかなか調子が上がらなくて…」

競技やレベルも違くても、ぶつかる壁はほぼ同じです。

これは、読者のみなさまにも覚えはないでしょうか。

なんとなく気が乗らない。
思うようにパフォーマンスが上がらない。
普段ならしないミスが続いてしまう。

そして、こう考え始めます。
「なんでこうなったんだろう」と。

原因を探そうとするけれど、なかなか特定できない。
あれかもしれない、いやこっちかもしれない。
そうしているうちに、思考が同じところをぐるぐる回り続ける。

抜け出したいのに、抜け出せない。
むしろ、考えるほど深くはまっていく。

ここで一つの見方があります。

調子がいい状態を「100」、うまくいっていない状態を「50」とします。
人は50の状態にいると、「なぜ100じゃないのか」「どうすれば戻るのか」と考え始めます。

これは自然な反応です。
ただ、この“原因探し”が続くと、少しずつ状態が崩れていきます。

気になることが増え、未完了の思考が積み上がる。
その結果、集中が途切れやすくなり、フローに入りにくくなる。

つまり、「調子が悪いからパフォーマンスが落ちる」のではなく、
「考えすぎることで、さらにパフォーマンスが落ちる」という構造です。

では、どうしたら良いのでしょうか。

ここでお伝えしたいのが、
「やるしかない」という言葉です。
ただし、これは気合いや根性の話ではありません。

うまくやろうとしない。
100に戻そうとしない。
いまは50でもいいと、一度引き受ける。

その上で、目の前の一つに手をつける。

この「やるしかない」に入ると、不思議と余計な思考が入らなくなります。
思考が消えるわけではありませんが、行動の後ろに回る。
結果として、一つのことに集中できる状態に戻っていきます。

ただし、この状態をずっと維持しようとする必要はありません。

人はうまくいけば、達成感を感じ、安堵し、気が抜けます。
これは自然な流れです。

大事なのは、「やるしかない状態」と「気が抜ける状態」を行き来できることです。
この行き来ができている状態こそが、ニュートラルです。

ここで無理に「この状態を維持しよう」とすると、また思考が入り込んできます。
その瞬間に、再び思考が前に出てくる。

だから意識するポイントは、とてもシンプルです。

考えすぎてもいい。
ただ、そのたびに目の前の一つに戻る。

「やるしかない」とは、追い込むことではなく、受け入れること。

余計な思考をそぎ落として、目の前の一つのことと向き合うこと。
それが結果的に、パフォーマンスを支える状態につながっていくと実感しています。