栄木の”ひとり言”

【第152号】習慣力

昨日、あるプロスポーツチームの講習会の講師として登壇してきました。
テーマは「習慣力」について。

「決めたことが続かない」
「誘惑に負けてしまう」

読者のみなさまもこんなお悩みではありませんでしょうか。
これは、人間である以上、プロスポーツ選手とて例外ではありません。

今回のコラムでは、「続ける力」=「習慣力」の身に着けるための「秘訣」をお伝えしたいと思います。

筆者自身、元来の性格は「飽きっぽい」「続かない」です。
それでも、この「習慣力」は後天的に身に着くものだと実感しています。

キーワードは、「報酬」です。

金銭、楽しみ、ストレス解消、痛みの軽減、満足感、爽快感、達成感、安心感…
私たちは、こういった報酬を得られるからこそ行動を起こします。
逆に、何の報酬も感じないものには行動は続かないものです。

私たちが何気なく触っている「スマホ」も一つの報酬です。
スマホを見ることによって得られる報酬は、「つながることができる」「新しい情報を得られる」「ポイントが貯まる」「映像やゲームで快楽・刺激を得られる」「暇な時間を潰すことができる」ことなどにあります。

スマホは、苦労をしなくても得られる報酬という点で「短期的報酬」と言えます。

一方で、街では「ジョギング」している人をよく見かけます。
筆者からすると、「苦しい」「疲れる」が先に来て、「報酬」よりも「苦痛」が先行します。
それでも、ジョギングを続けている人は、走った後の「爽快感」という報酬を得られるからでしょう。また、中長期的に見れば「健康」にもつながるかもしれません。

そういった意味では、「中長期的報酬」とも言えます。

ここでは決して、短期的報酬が「悪」で、中長期的報酬が「善」ということを言いたいわけではありません。
報酬は、その人の人生に「喜び」や「楽しみ」を与えてくれます。
ですから、1日のうちで色んなことを「ご褒美」に感じられることが「幸せな人生」と言えます。

ただ一つ問題なのは、現代は「短期的報酬」を刺激する環境で満ち溢れている…ということです。
不便があれば、コンビニやドラッグストアもあります。
お腹が減ったら、ウーバーイーツがあります。
暇になったら、スマホで時間を潰せます。
無料動画では、お金をかけずに退屈しのぎができます。

すると、人はどうなるか?
「苦労」の先にある、中長期的な報酬を感じられなくなってしまいます。

「どうせ頑張っても報われない…」
「上には上がいるから、自分がやったところで…」
「スマホ触っていた方が楽しい…」

となるわけです。
これが、「続けること」を妨げる要因です。

さらに、「短期的なものにしか報酬を感じない」心のあり方は、「自己効力感の低下」「虚脱感」「無力感」「厭世感」などにもつながってきます。

歴史を紐解くと、今から200年近く前、「アヘン」に溺れてしまった中国の民衆がそれを物語っています。

では、どうしたらいいのでしょうか。

それは、「一見何の得にもならない、ハードルの低い小さな行動」から始めてみることです。
たとえば、靴を並べる、ご飯を食べるときは「いただきます」を言う…でも構いません。
こんな小さな行動でも、積み重ねていくうちに「自己効力感」を得られます。
そうすると、「もう少し行動を増やそう」「ハードルを少し上げよう」と、「自己新記録」に挑む心構えになっていきます。

それが、結果として「続ける力=習慣力」の醸成につながっていきます。

人は「目標があるから頑張れる」という側面もあります。

習慣力があれば、簡単には諦めず、創意工夫しながら続けられる。
習慣力がないと、すぐ投げ出して、目標を見失ってしまう。

という図式になります。

だからこそ、習慣力を高めるためにも「目標なき小さな行動」から始めてみることを提案します。

「習慣力」は、より充実した人生を送るための手立てになります。

短期的報酬だけでなく、中長期的もの(達成感・爽快感・納得感・充実感・誰かから必要とされることなど)にも報酬を感じられるようになっていきます。