
1on1ミーティングの研修講師を務めていたときの出来事です。
以前も筆者担当の講義を聴講いただいたことのある方から声をかけられました。
「栄木さん、大学ラグビー部のメンタルトレーナーをされていたとお聞きしましたが、私もラグビーが大好きで、息子も今、高校でラグビーをしていて、キャプテンも務めているんです。」
私もラグビーは大好きなので、ラグビー談義で盛り上がるのは大いに結構…と思いきや、神妙な面持ちで話を続けました。
「栄木さんもご家族の方と1on1ミーティングをしているという話を聞きましたが、前回の栄木さんの講義を聴いて、『話を聴く』ことの大切さを身に染みて感じました。実は、息子が心身の不調を訴えて学校に行けなくなった時期があったんです。以前の私は、息子の精神的な未熟さを問い詰めたり、叱咤していましたが、それではいけないんだな…と。息子の話を否定せず、じっくり話を聴いて、息子の思いを受け止めることに注力しました。それから息子が復調して、学校に行けるようになったんです。あの時、栄木さんの話を聞いてなかったら今頃どうなっていたかわかりません。ありがとうございます。」
心から嬉しくなった瞬間でした。
伝えたいことが伝わった。
伝わって行動が変わった。
行動が変わった結果、成果が出た。
この仕事を生業とする身として、「講義の内容が良かった」というご意見をいただくのもありがたいのですが、
このように「行動(姿勢)が変わった結果、成果が出た」という話を聞くことが何よりも良薬になりますし、
仕事へのモチベーションになります。
それと同時に、身が引き締まる思いがしました。
言えば言うほど、それに伴った行動が求められるからです。
「言っていることと、やっていることが違う」
「伝える」ことが生業の身として、これは致命的なことです。
ただ、残念ながら「立派なことを言っている人が、実は…」という話は後を絶ちませんし、
「この人、ずいぶん立派なこと言っているけど、実際できているのかな…」と思うことはよくあります。
このご時世、
どんなことを言っている人か?
どんなことをやっている人か?
は、別物と捉えた方が良さそうです。
だからこそ筆者は、「等身大」でありたいと思っています。
たとえば研修でも、「等身大の自分」を「等身大の言葉」で伝えることを心掛けています。
「実は私もあまりできていないのですが…」
「私、実は人の話を聞くのが苦手でして…」
だからこそ、やっていることは実体験を交えて話すことができます。
高尚な話や、「あるべき論」を語るより、
こうやって正直に自分の言葉で話した方が、結果として、相手も共感し受け止めてもらいやすい…とも感じます。
ただ、いつまでもできないことを開き直っている…というつもりもありません。
大事なことを伝えるたびに、「自分はそれをできているか?」と、わが振りを見直し、
言っていることに、行動が追いつくよう心がけている今日この頃です。