栄木の”ひとり言”

【第222号】AIからの「問い」

先日、電車の中で新入社員らしき若者たちの会話が耳に入ってきました。

「なるべく人間関係がいい職場がいいな」
「上司がいい人だったらいいな」

彼らが話しているのは「人との関係」に関するものでした。
この若者に限らず、ここ近年、実際によく耳にする話です。
企業は莫大なお金をITに費やしているのに「IT環境が整っている会社がいい」という声はあまり聞きません。
そのとき、筆者は思いました。
ああ、やっぱり人は本能的に「誰と働くか」を大事にしているんだなと。
AIやテクノロジーがどれだけ進化しても、
私たちが本当に気にしているのは「人」なんだ、と。

正直に言えば、筆者はAIやテクノロジーの進化をありがたく感じています。
資料作成や文章整理、アイデア出し…
以前なら数時間かかった作業が、数分で終わることもあります。

でも、不思議なことに、
作業が早く終わって“時間が空いた”とき、
ふと不安になることがあります。

この空いた時間、私たちは何に使っているんだろう?
気づけばSNSをスクロールし、なんとなく動画を眺め、次の予定に追われている。
便利になったはずなのに、心がどこか満たされない。
そんな矛盾を、筆者自身も感じることがあります。

AIが登場して、「奪われる仕事がある」と言われています。
ですが、もっと現実的なのは、“時間を渡される”ことではないかと思います。

どう使うかは、自由。
でも、その使い方で、その人の“あり方”がにじみ出る。

自分のためだけに使うのか。
誰かのために使うのか。
生き方を、誰か任せにするのか。
それとも、自分の選択として引き受けるのか。

そういった違いを生むのは、知識やスキルよりも、マインドセットなのだと思います。

「富の格差」よりも、これからは「時間の使い方の格差」が深まっていく。
そんな予感すらしています。

では、AIの時代を生きる私たちは、どんな時間の使い方ができたら理想的なのでしょうか?

スキルや専門性を磨くのも大切。
でも、それと同じくらい、
「人としてのあり方」「人との関わり方」をアップデートしていくことが、
これからますます重要になると感じています。
まさに、冒頭の話ともつながってきます。

たとえば――
落ち込んでいる同僚に「最近、大丈夫?」と声をかける。
元気のない部下の“言葉にならないモヤモヤ”を感じ取る。
関係がギクシャクしてしまった相手に、「ごめん」と言える勇気を持つ。

こうした行為は、非効率で、成果も測りにくいし、正解もありません。
でも、人と人の信頼やつながりを育てるこの営みは、
どんなAIにもまだ再現できない、私たち人間にしかできない価値だと思うのです。

私たちIK!IK!は、そんな「人間らしさ」にこだわって活動しています。
一人ひとりが自分と向き合い、他者との関係性を変え、行動を変えていく。
そのプロセスを、とことん丁寧に、伴走していく。
それが「人が活きる社会」につながると信じているからです。

私たちは、AIの進化を恐れてはいません。
むしろ、人間らしさを問い直すチャンスだと考えてます。

最後に、ひとつだけ問いかけさせてください

「AIがくれた“余白”を、あなたはどう使いますか?」

それは、ただの「時間の使い方」の話ではなく、
「あなたは、どう生きたいですか?」という問いそのものなのだと思います。