先日のある研修での一幕。
とても“アツい”受講者がいました。
組織を立て直そうと使命感に燃えていて、話すたびにその真剣さが伝わってきます。
ゆえに、その方にはどうしても許せないメンバーがいるようでした。
「身勝手で、冷めていて、やる気がない」
研修中でも、そのメンバーの顔が何度も頭に浮かぶほど、フラストレーションを口にしていました。
筆者はその姿を見て、以前の自分を思い出しました。
「正しいのは私で、悪いのはあなた」
——そう思い込んでいた頃の自分です。
当時はドラマ『半沢直樹』が流行っており、自分を勝手に主人公に重ね、“正義を貫く側”のつもりでいました。
今振り返れば、言っている内容は間違っていなかったとしても、そこから発する態度や言動によって職場全体に悪影響を与えていたように思います。
コミュニケーションとは、ブーメランのようなものです。
強く投げれば強く返り、優しく投げれば優しく返る。
たとえば、こちらがイラっとしたトーンで話せば、相手もどこか構えてしまう。
疑ってかかれば、相手も自分を疑う。
逆に、落ち着いた声で「大丈夫?」と聞くだけで、相手の表情がふっと緩む。
こちらが等身大でいれば、相手も少しずつ心を開く。
人は、相手の感情を無意識のうちに“真似して”返しているのです。
(心理学でいうミラーニューロンの働きです。)
冒頭の受講者も、語気が強めで、初対面の筆者にすらフラストレーションが伝わってきました。
でも、そんなブーメランを投げている自分に“気づけるかどうか”で、次の一歩が変わります。
「相手が自分勝手で冷めているから、こっちも怒るんだ」と他責にするのか。
それとも、「自分がイライラのブーメランを投げているから、相手がさらに構えるのかも」と
冷静に立ち止まってみるのか。
人間関係の出発点は、相手ではなく“自分”です。
どんな関係も、結局は「自分が源泉」。
その視点に立てた瞬間、もう半分は解決しているのだと思います。
コミュニケーションの世界には、いろんなブーメランの使い手がいます。
相手が想定外のブーメランを投げてきても、
それをキャッチして、整えて、少し磨いてから投げ返す。
ユーモアと愛情を込めて。
そんな人は、人間関係の達人です。
もちろん、キャッチミスして顔に当たることも多々あります。
でも、その痛みから学べることも多いものです。
もう一つ大事なのは、「自分もときどき悪いブーメランを投げてしまう」と気づけること。
その瞬間、「今の投げ方、よくなかったな」と思えれば、それだけで成長です。
それを認識できれば、「どんないい人でも、ときに悪いブーメランを投げることはある」と受け容れることができます。その逆もしかりです。
ブーメランは、投げ方ひとつで行方が変わります。
強くぶつけるのではなく、きれいな放物線を描くように投げる。
そうすれば、きっと良い形で返ってくる。
今日も一日、周囲の人たちに良いブーメランを投げたいものです。
(by 西城秀樹……ではなく、筆者も負けじと “情熱” で。)
