栄木の”ひとり言”

【第210号】魔法の言葉 ~そうだね~

今回は、筆者が読んでいた本で「これ、いいな」と思った一節を紹介します。
著者は、数々のアスリートのパフォーマンス向上を支援してきた脳科学者・林成之さんです。

2011年、澤穂希さん率いる「なでしこジャパン」がW杯で優勝したときのこと。
大会前に、当時の佐々木則夫監督が林さんに「先生、頭を強くする方法はありますか」と相談したそうです。
林さんがそのとき伝えた言葉は――「そうだね」

この「そうだね」は、お互いを肯定する魔法の言葉です。
肯定的な言葉は脳の報酬系を刺激し、共感を生み出すと言われています。
その結果、心理的な距離が縮まり、相手との信頼関係が深まるのです。

林さんは佐々木監督に「合宿で話をするときは、必ず『そうだね』と言ってから始めると良いですよ」と助言しました。
逆に、否定的な言葉は脳に入りづらく、相手を無意識に遮断してしまいます。
自己保存の本能が働き、「意見が違う人とは仲良くなれない」と感じやすくなるからです。

そのため、否定語を避け、意識的にポジティブな言葉を使うことが大切だと林さんは言います。
「そうだね」は、仲間意識を引き出す魔法の言葉なのです。

この言葉は後に、女子カーリングチームのロコ・ソラーレでも活躍します。
林さんがロコ・ソラーレを指導するきっかけは、吉田選手からの手紙でした。
失敗を重ね、チームからダメ出しを受けた吉田選手は林さんに相談します。
そのとき林さんは「『そうだね』と言ってからチームプレーをするといいよ」と伝えました。

これがチームの合言葉となり、北海道なまりで「そだねー」となって広まったのです。
まさに「そうだね」は、チームの潜在能力を高める魔法の言葉だと言えるでしょう。

では、これを日常に活かすには?
「面白そうだね」「楽しそうだね」とポジティブな言葉を使うのがポイントです。

そう聞いて合点がいった筆者は、早速妻との散歩で実践してみました。
何を言われても「そうだね」と返していたのですが…。

何度目かの「そうだね」に、妻が突然「無理に合わせなくていいから!」と、まさかの逆ギレ!
このとき学んだのは、魔法の言葉も過信すると逆効果、何事もほどほどが肝心だということでした。(笑)

「そうだね」は、チームや人間関係を円滑にする素晴らしい言葉ですが、使いすぎには要注意…。
相手を尊重する気持ちを忘れず、自然に使うのがコツかもしれません。

本コラムを読んで、「確かに『そうだね』」と思った方は、早速試してみてはいかがでしょう?