年末になると、ふと立ち止まって
「今年はどんな一年だっただろう」と振り返ることがあります。
そんなとき、思い出してほしい感覚があります。
それは、時間の長さです。
電車に乗っているとき、こんなことを感じたことはないでしょうか。
満員電車で身動きが取れず、ただ立っているだけのとき。
「まだ着かないかな」「長いなあ」と、時間がやけに長く感じます。
一方で、電車の中で仕事に集中しているときや、
考えごとに打ち込んでいるときはどうでしょう。
気がついたら、もう目的地。
「え、もう着いたの?」と感じることも少なくありません。
経過している時間は同じはずなのに、
感じ方はまったく違います。
たとえば、こんな経験はありませんか。
・小学校の頃、校長先生の話はやけに長く感じた。でも、好きな授業はあっという間に終わってしまった。
・仕事で形式的な会議に参加しているときは時間が長く感じる。でも、仕事に集中しているときは、あっという間に時間が過ぎる。
・自分が会話に入れない飲み会は長く感じる。でも、気の合う人とワイワイ盛り上がっているときは、時間が一瞬で過ぎ去る。
どれも「あるある」ではないでしょうか。
ここで、ひとつシンプルな想像をしてみてください。
ただ10分間。
1から600まで、心の中で数えてみてください。
きっと多くの方が、
「思った以上に長い」
「まだ終わらない」
と感じるはずです。
この10分間、意識のほとんどは
「今、何秒たったか」
「あといくつ数えればいいか」
という、時間そのものに向いています。
だから、同じ10分でも、とても長く感じられるのです。
じつは、ここに時間感覚の正体があります。
時間の感じ方は、どれだけ時間が経ったかではなく、
意識がどこに向いていたかで決まります。
意識が
・時間
・現在地
・終わるまでの残り
に向いているとき、
脳は時間を細かく細かく確認します。
その結果、時間は長く感じられます。
一方で、仕事や学び、対話など、
何かに集中しているとき。
意識は「今やっていること」に向き、
時間を気にする余裕がなくなります。
だから、あとから振り返ったときに
「あっという間だった」
と感じるのです。
ただし、ここでひとつ大事なことがあります。
時間を忘れるほど没頭していたからといって、
それが必ずしも“良い時間”とは限りません。
終わったあとに、
・達成感
・納得感
・「何かを生み出した」という実感
が残る時間もあれば、
反対に、
・後悔
・虚しさ
・「時間を使ってしまった」という感覚
だけが残る時間もあります。
違いはシンプルです。
その時間が、
ただ消費された時間だったのか、
それとも
何かが積み上がる時間だったのか。
年末だからこそ、こんな振り返りをしてみてもいいかもしれません。
この一年で、
時間を使って、何が残ったでしょうか。
経験として残ったもの。
考え方として残ったもの。
人との関係として残ったもの。
逆に、
時間は使ったけれど、
何も残らなかったものは何だったでしょうか。
これは反省のための問いではありません。
来年の時間の使い方を選ぶための問いです。
「この一年で、時間を使って何が残ったか」
それは、
来年、どんな時間を増やし、
どんな時間を減らすかを教えてくれる、
とても正直なヒントなのかもしれません。
