栄木の”ひとり言”

【第264号】360°アンケート結果から見た”理想の上司”とは?

―― 360°アンケート結果から見えた事実

当社では、上司を対象に360°アンケートを実施しています。
上司本人の自己評価だけでは見えない「部下・同僚からの見え方」を可視化するためです。

そこで見えてきた、ある事実があります。

それは――
「厳しい上司は時代遅れ」でもなければ、
「優しい上司が正義」でもなかったということです。


■ 結果を検証してみた

まず、シンプルに検証してみました。

  • 「人がいい」「優しい」というコメントが多い上司
  • “悪癖”が少ない上司
    (例:決めつけが少ない/感情的に当たらない/人を否定しない など)

このタイプは、全体的に評価が高めです。
ここまでは予想通りでした。

ただし、自由記述を丁寧に読んでいくと、同時にこんな声も多く見つかりました。

  • 「いつも抱え込んでいるように見える」
  • 「もっと周りを巻き込んでほしい」
  • 「言うべきことは、きちんと言ってほしい」
  • 「リーダーシップを発揮してほしい」

つまり、“人がいい上司”は安心感を生む一方で、背負い込みやすい。
その結果、組織としては「推進力」や「方向づけ」が弱くなることがあります。
――この構造が浮かび上がってきました。

■ 悪癖が多い上司は、やはり評価が低めだった

次に、“悪癖”が多くつく上司を見てみます。

このタイプは、総じて評価が低めです。
ただし、コメントの中身が興味深いです。

  • 「知識が豊富」
  • 「プレイヤーとして仕事はできる」
  • 「判断が早い」
  • 「言っていることは正しい」

能力は高い。仕事もできる。
なのに評価が伸びません。

では、なぜか。

360°の自由記述を読むと、
“できるがゆえの反応の速さ”が、逆に空気を損ねてしまっているケースが見えてきました。

実際、こんなコメントがあります。

  • 「相談すると、話し始めた段階で『つまりこういうことだよね』と結論が返ってくる」
  • 「課題を共有したかっただけなのに、すぐに『じゃあこうしよう』となる」
  • 「最後まで聞いてもらえないと感じることがある」
  • 「言っていることは正しいが、反論しづらい雰囲気がある」

これらに共通しているのは、
上司が“間違っている”わけではない、という点です。

むしろ正しい。むしろ早い。むしろ優秀です。
ただ――

正しさとスピードが先に出てしまい、部下の思考と感情が置き去りになる。

この状態になると、職場で何が起きるか。

相談が減る。
報告が遅れる。
余計な忖度が増える。
挑戦が止まる。

結果的に、組織の空気は少しずつ“守り”に入っていきます。

■ では、どのような上司が評価が高いのか?

ここまで見て、こう思う人も多いはずです。

「結局、優しい上司が一番いいんじゃないの?」
「厳しい上司は嫌われるんじゃないの?」

ところが、もう一段深掘りすると、意外な事実が出てきました。

評価が高い上司の中に、“厳しい上司”が一定数存在したのです。

ここが、今回の一番面白いポイントでした。

■ 高評価の“厳しい上司”は、何が違うのか?

では、その“厳しい上司”は何が違うのか。

結論から言えば、
厳しさの矛先が「人」ではなく「基準」に向いているという点です。

自由記述には、こんな声が並びます。

  • 「言うべきことは言うが、こちらの話を一度受け止めてくれる」
  • 「厳しいが、筋が通っていてブレないので納得感がある」
  • 「指摘された後に、次どうするかまで一緒に考えてくれる」
  • 「最後は責任を持ってくれるので安心できる」

厳しい。要求もする。基準も高い。
でも、空気は悪くならない。

むしろ、職場が引き締まり、前に進む。

この違いを作っているのは、テクニックというより
“反応の型”でした。

■ 高評価の“厳しさ”には型がある

360°のコメントを読み込んでいくと、
評価の高い厳しさは、ほぼ共通してこの流れになっていました。

評価が上がる「厳しさの4ステップ」

① 受け止める(感情)
「そう感じたんだね」「そこはしんどかったよね」

② 整理する(事実)
「何が起きていて、どこに困っている?」

③ 示す(基準)
「うちの基準はここ。ここは外せない」

④ 決める(次の一手+背負う)
「じゃあ次はこうしよう。責任は持つ」

厳しいことを言っているのに、空気が荒れません。
むしろ前に進む。

この順番があるだけで、
“厳しさ”は「圧」ではなく「推進力」になります。

■ 厳しさが嫌われるのではない。“相手を尊重しない反応”が嫌われる

今回の360°アンケート結果から見えてきたのは、
「厳しさ」そのものではなく、もっと手前の話でした。

評価が下がる厳しさは――

  • 先回りして結論を言う
  • すぐ解決に持っていく
  • 話を最後まで聞く前に判断する
  • 正しさで押し切る
  • 指摘が「人」寄りに聞こえる

つまり、相手を尊重していない反応です。

逆に評価の高い厳しさは――

  • 一度受け止める
  • 事実を整理する
  • 基準を示す
  • 次の一手を一緒に考える
  • 最後は背負う

つまり、反応が整っている

この差が、職場の空気を決めていました。

■ 最後に:「厳しい上司」が必要な時代になっている

「心理的安全性が大事」と言われる時代だからこそ、
実は組織にはもう一つ必要なものがあります。

それは、基準と推進力です。

優しいだけでは、組織は前に進まない。
厳しいだけでは、組織は止まる。

360°アンケートが教えてくれたのは、
その間にいる、こういう上司の存在でした。

空気を壊さず、基準で引っ張る“厳しい上司”。

嫌われるのは「厳しさ」ではない。
尊重のない反応だった。

――これが、360°アンケート結果から見えた事実です。