栄木の”ひとり言”

【第265号】提案を受ける側になって、気づいたこと

先日、久しぶりに「提案を受ける側」になる機会がありました。

普段は提案する側に立つことが多いので、少し新鮮な体験でした。

資料は整理され、
ロジックも明快で、
内容も的確。

いわゆる“ちゃんとした提案”です。

きっと、間違ってはいない。
むしろ、とても誠実で、よく考えられている。

それでも、なぜか心が動かない。

「うーん……なんか違うんだよな」

うまく言葉にできない、ちょっとした違和感が残りました。

でも同時に、こうも思いました。

これは、提案してくれた方が悪いわけではなく、
むしろ自分にとって、とてもありがたい体験だったな、と。

久しぶりに「受け手」になったからこそ、
自分がこれまでどんな提案をしてきたのか、
どんな関わり方をしてきたのかを、じっくり振り返ることができたからです。

もしかしたら、
自分も同じように「正しい提案」だけを届けて、
相手の心の奥までは見に行けていなかったことがあったかもしれない。

そう思うと、なんだか少し身が引き締まりました。

これまでの仕事では、

専門知識を磨き、
最適解を提示し、
アドバイスをする。

そんな「専門家らしさ」が価値の中心にあったように思います。

もちろん、専門性は今も欠かせません。

ただ最近、それだけでは足りない場面が増えている気がしています。

お客様からよく言われるのは、

「どれだけ、私たちのことを分かってくれているか」

という言葉です。

提案の中身よりも先に、
「理解しようとしてくれているか」。

そこが、実はいちばん見られている。

そんな空気を、強く感じます。

正しいことは、頭では理解できます。
でも、人が本当に動くのは、「心から納得したとき」なのかもしれません。

提案を完成させることよりも、対話を重ねること。

「これが答えです」と示すより、
「一緒に考えましょう」と隣に座ること。

少し遠回りのようで、実はそのほうが結果につながる。

そんな場面が、少しずつ増えてきました。

そして最近、ぼんやりと感じていることがあります。

これからは、AIが多くのことを代わりにやってくれる時代になります。

情報を集めることも、
資料を整えることも、
見栄えのいい提案書をつくることも、
きっと今よりずっと簡単になるでしょう。

だからこそ、

「人にお願いする意味って何だろう」

そんな問いが、よりはっきりしてくる気がしています。

相手のホンネや感情の微細な動きをくみ取る力。
その想いに共感する力。

そして、集めた素材を、
その人、その組織にしか当てはまらない形に編集する力。

さらに、提案して終わりではなく、
成果が出るところまで粘り強く伴走し続ける力。

そんな、人間くさい力こそが、
これからの仕事ではますます求められていくのかもしれません。

提案して終わりではなく、
一緒に結果を見るところまで。

そのほうが、自然に信頼が積み重なっていく気がしています。

筆者自身、まだまだ手探りですし、
「これが正解です」と言えるほど整理もできていません。

ただ、

「それそれ!」
「まさにそれが言いたかった」

そう言ってもらえた瞬間の、嬉しさだけは忘れられません。

あの一言が、信頼の合図なのだと思います。

今回、提案をしてくださった方にも、
そんな大事な気づきをもらいました。

だからこそ、少し感謝しています。

今日もまた、まずは相手の話をじっくり聴くところから。

そこから、仕事を始めてみようと思います。