先日、プロ野球やラグビーの指導者と対話する機会がありました。
彼らが共通して話していたのは、
「競技レベルは昔より確実に上がっている」ということです。
その理由の一つが、オフザフィールド(グラウンド外)の過ごし方です。
昔のプロ野球では、タバコや酒は珍しいことではありませんでした。
しかし今の選手たちは違います。
睡眠、食事、トレーニング、リカバリー。
自己管理のレベルは、昔とは比較にならないほど高くなっています。
さらに、映像技術やスポーツ科学の進歩により、
・フォーム解析
・身体の使い方
・トレーニング理論
「何をどうすれば上達するのか」という道筋も、以前よりはるかに明確になりました。
いわゆる「気合」「根性」だけに頼る世界ではなくなり、
トレーナーなど専門的知識を持つスタッフの役割も大きくなっています。
ここまで聞くと、スポーツの世界は合理的に進化し、
選手は以前より成長しやすくなったようにも思えます。
しかし、同時に新たな問題が浮かび上がってきました。
それは、
自分で考えて答えにたどり着く力が弱くなっていることです。
昔のスポーツは、何が正解か今よりも不鮮明でした。
だからこそ、試行錯誤する。
自分で仮説を立てる(自分流)。
試して、失敗して、修正する。
そうやって、自分なりの答えを探していくしかありませんでした。
しかし今は違います。
動画を見れば改善点が分かる。
理論を学べば正しい動きが分かる。
つまり、答えにすぐ触れることができる時代です。
もちろん、それ自体は素晴らしいことです。
しかし同時に、
自分で考え抜くプロセスを経験する機会が減っている
という指摘もあります。
そして、この違いは意外なところに現れます。
それは、主体性です。
自分で考え、試し、失敗しながら答えにたどり着いた人は、
結果を「自分の行動の結果」として受け止めます。
だから、
次はどうするか。
何を変えるか。
と、自分で考え続けることができます。
しかし、最初から答えを与えられてきた場合、
うまくいかなかったときに、
トレーナーが悪い。
指導者が悪い。
環境が悪い。
と、原因を外に求めやすくなります。
つまり、
自分を行動の主体として捉えにくくなるのです。
すぐ結果を求められるプロの世界なら、なおさらです。
そして、これはスポーツの世界だけの話ではありません。
仕事の世界でも、同じことが言えます。
そんな時代だからこそ、希少価値が高まっているのは、
答えを知っていることではなく、
経験を通じて、自分で考え抜く力
なのかもしれません。
そして、その力は、
一人で黙々と考えているだけでは、なかなか育ちません。
自分の考えを言葉にし、
問いを投げかけられ、
また考える。
自ら考え、答えにたどり着くプロセス。
その時間こそが、
対話であり、1on1であり、コーチングなのだと思います。
実際、プロのアスリートと話していると、
「答えを教えてほしい」というよりも、
自分の中にある答えを整理したい
という感覚で対話を求めてくることが少なくありません。
考え、試し、修正しながら
自分の答えをつくっていく。
そのプロセスを支える存在として、
私の仕事が求められているのかもしれません。
