栄木の”ひとり言”

【第275号】”ワークライフバランス”の落とし穴

4月は、筆者にとって”新入社員研修”シーズンです。
毎年、フレッシュな新入社員に会う度に、こちらも新鮮な気持ちになります。

「どんな社会人生活を送れたら理想ですか?」
と尋ねると、毎年のように耳にする言葉があります。

それは、「プライベートを充実させたい」という声です。

仕事に追われず人生を充実させたい。
この思い自体は、とても大切で、素晴らしいものだと思います。

その流れで、こうした言葉もよく出てきます。

「なるべく残業はしたくない」
「休日はしっかり休みたい」

これも自然な感覚です。
誰だって、仕事に追われ続ける生活は望まないはずです。

ただ、ここに一つだけ、見落とされがちなポイントがあります。


以前、関わった新入社員の方との面談で、こんな話がありました。

「休みの日も、なぜか心が休まらないんです」
「定時で帰りたいのに、残業が続くのがストレスで…」

とても率直で、よくある悩みだと思います。

一方で、周囲の上司や先輩に話を聞くと、こんな声もありました。

「言われたことはやるけれど、自分から動こうとしない」
「好きな仕事はやるけれど、頼まれたことは後回しになりがち」

ここに少しズレが生まれています。

本人の中では、
「プライベートを大事にしたい」
 ↓
「自分の負担はなるべく減らしたい」
 ↓
「決められたことはちゃんとやる。でも、それ以上のことはやりたくない」
という流れが、無意識のうちにできてしまっています。

その結果、なかなか周囲からの信頼が積み上がらず、
「なぜか評価されない」と感じてしまうことにつながります。

では、何が問題なのでしょうか。

環境でしょうか。
それとも上司でしょうか。

筆者は、本質はそこではないと考えています。
ポイントは「日々のちょっとした姿勢」にあります。

例えば、コピー用紙が切れているとき。
「これは自分の仕事ではない」と思うかどうか。

トイレのハンドペーパーがなくなっているとき。
「面倒だから後で誰かがやるだろう」と流すかどうか。

報告一つでも、
「言われたからやる」のか、
「相手が安心するように先回りする」のか。

こうした小さな違いが、少しずつ積み重なっていきます。

仕事というのは、自分一人で完結するものではありません。
必ず相手がいます。

しかし、「自分の負担を減らしたい」という気持ちが強くなると、
知らず知らずのうちに、仕事が“自分中心”になってしまいます。

ここに、”ワークライフバランスの落とし穴”があります。

少し逆説的ですが、筆者はこう考えています。

「仕事こそ、相手の立場で考えた方が、結果として楽になる」

相手のことを少しだけ想像する。
一歩だけ先回りする。
面倒なことを少しだけ引き受ける。

その積み重ねが、信頼になります。

信頼が積み上がると、細かく指示されることが減り、
任せてもらえる場面が増えていきます。

結果として、やり直しや無駄なストレスが減り、
仕事に振り回される感覚も少なくなっていきます。

ワークライフバランスを大切にしたいのであれば、
仕事を抑えることから入るのではなく、
まずは仕事の中で信頼を積み上げること。

その方が、結果として心も時間も整っていきます。

筆者は、ワークライフバランスは「最初に求めるもの」ではなく、
「後からついてくるもの」だと考えています。

だからこそ、まずは目の前の相手に向き合うこと。
そこからすべてが始まるのではないでしょうか。