
1on1スキル研修を実施していて、受講者から最も多く頂くリクエストの一つに、
「質問力を高めたい」
というものがあります。
その背景にあるのは、「メンバー(部下)育成」への困難さがあります。
「なかなか気づいてくれない。かといってこのご時世、強く言うわけにはいかない。」
「とはいえ、説得してもなかなか響かない。」
といったものです。
現状に甘んじ、考えも行動も変わらなければ、人は成長しません。
成長しなければ、当然、成果も限定的になってしまいます。
いつの時代も、上司にとってはメンバー(部下)育成は悩みの種です。
そんな中、「質問力」はメンバー(部下)育成の効果的なツールになります。
効果は以下の通りです。
- 相手のホンネを引き出すことができる
(例)ぶっちゃけどう思う? / もしあの時に戻れたらどんな決断をしていた? - 具体的な情報を得ることで、真の問題を発見できる
(例)いつからそう思ったの? / 例えばどんな場面? - 自己解決を促進することができる
(例)目標達成に向けて、どんなことに取り組んでみたい? - 相手との信頼関係を築くことができる
(例)(誠実な関心を寄せながら)〇〇さんが大事にしているものは何ですか?
このような情報は、インターネットや書籍を通じても入手することができます。
では、情報を入手することで質問力は高まるか?というと「否」です。
一般的な知識とは異なり、ボキャブラリー(語彙)や考え方を身に着けただけでは高まらないのが「質問力」です。
なぜなら、「質問力」は、「感情の理解(相手への理解)」がベースにあるからです。
実際に研修を実施していて、IQやビジネススキルが高そうな人でも、いざ相手に質問するとうまくいかないケースがよくあります。
「機械的」になってしまったり、相手の心の動きを感じ取れず、「マニュアル的」な質問になってしまうのです。
質問力については筆者もまだまだ発展途上ではありますが、クライアントへの1on1コーチングを実施する上で留意しているポイントを、以下の通り紹介いたします。
目次
1. 相手の「思考の盲点」は?
人には必ず「思考のパターン」があります。
「〇〇だから××である」といったものです。これは十人十色です。
経験によって、思考や価値観は強化されます。
ですが、その思考や価値観が強化されればされるほど、それ以外の部分が「盲点」になります。
対話をしながら、相手の思考パターンと盲点を感じ取れるかが大切なポイントになります。
その上で、相手の考えを尊重しつつも、盲点についてシンプルに質問を投げかけると、「ハッと」することがあります。
(刺さらないこともありますが…)
2. 質問は「相手との間合い」を意識
突っ込んだ質問をした方が、相手は深く考えて答えを出そうとします。
それが新たな気づきにつながり、自己解決への道筋となります。
ですが、質問とは思考を強制するもの。
場合によっては嫌がられます。突っ込んだ質問はなおさらです。
ですから、「相手から見て自分はどう映るのか?」という間合いを意識した上で、遠慮もしすぎず、かといって失礼にもならないよう「ギリギリの線」を攻めていく「感性」が重要になってきます。
(たまに「地雷」を踏むこともありますが…)
3. 質問は「タイミングが命」
「あなたにとって『生きる』とは何ですか?」
こんな質問を会話の冒頭にされたら、読者のみなさまもイラっと来ると思います(笑)
ですが、このような質問も、繰り出すタイミングによっては深く刺さります。
例えば、相手が自分の想いを言語化することで自己理解が進んだものの、どうにも自己解決に至らず、思考が堂々巡りしているときなどです。
相手の思考が「煮詰まった」タイミングで投げかける「シンプルな問い」は、相手に強い気づきをもたらすことがあります。
上記のポイントは、「何を質問しよう…」と頭の中で考えを巡らせていてはうまくいきません。
むしろ、頭の中は「からっぽ」のニュートラルな状態でいた方がうまくいきます。
なぜなら、その方が、相手の思考や心の動きをありのまま感じ取れるからです。
だから、相手の思い込みに気づき、タイミングを外さずに質問をすることができます。
その上で、質問の語彙(ボキャブラリー)や、枠組み(フレームワーク)は役立ってきます。
…と色々と書き連ねてきましたが、筆者にとっては「子どもからの素朴な質問」にハッとさせられることが多かったりします。
「なんで大人は戦争ばかりするの?」
子どもは「思い込み」や「常識」に囚われておらず、私たち大人よりもニュートラルに世界が見えているのかもしれませんね。