栄木の”ひとり言”

【第194号】研修の功罪

先日、ある企業で、終日かけて「アンコンシャスバイアス研修」を実施しました。
いつも以上に、始まる前の受講者の雰囲気が「どんより」していました。
まるで「心の中で腕組みをしている」ような感じです。
筆者が実施する研修は、「手上げ」で積極的に参加する方よりも、 どちらかと言うと「全員参加型」のものが多いです。
ですので、ある程度は「消極的な方」がいて当然なのですが、今回は特にその割合が多いと感じました。

場の空気が和らいできた頃、受講者に聞いたところ、
「今月で終日の研修4回目なんです…」
「9月の下旬は半期決算なので、そこだけは避けて欲しかったです…」
「(研修で)言っていることはわかるんだけど、忙しくて実践できない…」
という声をいただきました。

これまでのコラムで何回か触れている通り、 筆者もサラリーマンの頃「大の研修嫌い」でしたので、気持ちは痛いほど理解できます。

なぜ嫌いだったか、心の奥を覗いてみると、 多くの研修が「思想の押し付け」のように感じたからです。

「〇〇はいけません。」
「〇〇してください。」
「○○することが大切です。」

言っていることはその通りなんですが、 「それができないから困っているんです」 という心のモヤモヤが解消することは数えるほどしかありませんでした。

ですので、研修は「時間が奪われる」感覚しかありませんでした。
楽しみといえば、研修後の仲間との交流くらい。

「研修なんてどれも同じ」

そう思うのも無理はありません。
だからこそ、そんな受講者の「バイアス」を払拭することにやりがいを感じます。

今回も、おかげさまで「今まで受けてきた研修とは全然違った」「(研修には期待していなかったけど)意外に面白かった」「多くの気づきがあった」という声をいただきました。

こうして初めて「現場でも実践してみようかな」という気持ちになってくれます。
行動を変えるということは、葛藤が伴いますが、一人ひとりがその葛藤を乗り越えてこそ、組織風土は徐々に変わっていきます。

そう考えると研修の功罪はとても大きいです。

マイナスに振れると、時間の損失のみならず、社員のネガティブ感情を増幅させます。
例えば、終日の対面型の管理職研修。 時間的コストを金銭に換算すると、1日拘束すると一人当たり「万」単位の費用はかかるでしょう。
また、管理職がいないことで現場の仕事が滞るので、それも上積みされます。
さらに、マイナスの感情的なコストが発生すると、その損害は計り知れません。

一方で、プラスに振れれば、「行動変容」のきっかけになります。
管理職の行動変容が起きた結果、周囲との協業力が高まったり、人間関係による離職が減ったりするなど、金銭的な投資以上の効果があります。
さらに「あのとき受けた研修が人生を変えるきっかけになった」となれば、お金には変えられない価値になります。

学ぶだけの研修は、既にe-ラーニングに置き換えられていきます。
一方で、これからの時代の企業研修の価値は、「考え方や行動を変える」きっかけとなるような場にますますなっていくことでしょう。
キーワードは「気づき」です。

今、多くの企業で「いかに良好な人間関係を築くか」「一人ひとりの自律性・主体性をいかに高めていくか」がテーマになっています。

「それができないから困っているんです」を解決するのが、当社の役割です。