栄木の”ひとり言”

【第190号】喜びと不安の交差点

昨日、出張帰りの飛行機の機内雑誌で、WBC前監督の栗山英樹さんがこんなことを述べていました。

「常に周囲に喜んでもらえるような存在であり続けたいと願っています。個人でも企業でも、周囲の人を幸せにできることって大きな強みだと思うんです。」

この一節には、筆者も深く共感しました。
当社の活動によって、人と社会がイキイキすることを願う身として、この思いは非常に共鳴するものです。
実際、多くの人が「周囲を幸せにしたい」と願っているでしょう。

しかし、現実には、ふとした不満や不安が頭をよぎり、ネガティブな気持ちに囚われてしまうことがあります。
その結果、周囲に不満をぶつけたり、不機嫌な態度を取ってしまうこともあるかもしれません。
このような状況では、周囲の人を幸せにすることは難しくなります。

頭では「周囲を幸せにしたい」と分かっていても、心がついてこないことは多いものです。
社会貢献を掲げる企業でさえ、内部では人間関係の悩みが絶えず、それがネガティブな感情を引き起こす原因となっている場合があります。

社会貢献を目指す一方で、企業が生き残るためには業績向上や目標達成(=お金)は欠かせません。
周囲に喜んでもらうこと(=For you)と、自分が生き残ること(=For me)のバランスを取ることは非常に難しい課題です。

「なんで分かってくれないの?」(現状への不満)
「〇〇になったらどうしよう」(将来への不安)といった心理は、自己防衛的な「For me」の発想を助長します。
そして、これらの不安や悩みは、「お金」と密接に結びついていることが多いのです。

例えば、業績目標(=お金)に達しないことで目標達成のためのプレッシャーが増し、評価が下がれば報酬も減るのではないかという不安が生じます。
資本主義社会では、「お金」は単なる交換価値にとどまらず、企業価値や人間の価値観にも影響を与えます。
大谷翔平選手のように、「稼いでいる人」が人間的にも優れているというような価値観が刷り込まれているのです。

このように考えると、「お金」への執着を適度に手放すことが、周囲を幸せにするための第一歩であるように感じます。
これは、散財するという意味ではありません。
「お金」は欲求を満たす一方で、不満や不安を引き起こす温床でもあります。

幸い、人間には、自分たちの行動が他者に喜びを与えることで、自身も喜びを感じる資質があります(ミラーニューロン)。
成果に貢献し、他者を喜ばせることに専念し、そして「お金」はその副産物であり、お釣り程度に得られれば十分です。
役に立てたこと、感謝をいただいたことこそが、真の報酬と考えます。

最終的には、そのような姿勢が、周囲から必要とされる存在や冒頭の周囲を幸せにできる存在になることにつながり、結果としてお金にも困らない生活につながるのではないでしょうか。

そのためにも、自己研鑽を怠らず、心身を鍛え、日常から困っている人がいたら助ける、
そして、身近な人こそ大切にすることを心がけたいと改めて思った次第です。