
「筋書きのないドラマ」 それが「夏の甲子園」です。
本コラムも書いている今朝は、ベスト8の戦いが始まる頃です。
甲子園ウォッチャーの筆者として、ここ最近思う事は、「メッセージ性を強く持った学校が優勝している」ということです。
2年前の仙台育英高校の須江監督の「青春は“密“である」というメッセージは、コロナ禍に生きる私たちに強い印象を与えました。
昨年の慶應義塾高校は、「脱・坊主頭」「エンジョイベースボール」「自ら考える野球」など、”多様性”を示す象徴となりました。
これも、高校野球に限らず、これからの世の中のあり方に対するメッセージのように思えました。
つい、先日の大社高校(島根)vs早稲田実業(西東京)の試合は、見る人の心を鷲掴みにしました。
体格のいいパワーヒッターが、ガンガン長打を打つ…というここ近年の傾向とは一線を画した試合で、まるで”青春ドラマ”を見ているような気持ちになりました。
オリンピックの「メダルの数」に象徴されるような、勝った者だけが賞賛されるという「勝利至上主義」「結果がすべて」と叫ばれる世の中の潮流にあり、「勝負の本質は、勝ち負けを超えたところにある」というメッセージを私たちにくれました。
今日現在だけで言うと、大社高校を応援する人が多いように感じます。
金足農業、佐賀北高校など、公立高校は、日本人の感覚からすると応援したくなる気持ちも分かります。
(出雲大社の”縁結びの神様”も加勢しているかもしれません?)
もしかしたら、対戦校もやりにくいかもしれません。
球場全体が大社高校を応援しているかのような独特の雰囲気もあります。
一方、本日対戦する神村学園高校の小田監督のコメントには、筆者自身ハッとさせられました。
「(これまでの大社の対戦校は)自分たちが敵に回ってるような雰囲気を感じて、表情が曇ってプレーしている子が多い。逆にあんな体験って人生で何度もできることじゃないんで、ウチの選手にはああいう時にいい表情でグラウンドに立って、心を穏やかに勝負してもらいたい」
とチームのスローガンである「和顔愛語」になぞらえました。
また「甲子園には魔物がいる」とはこれまで何度も言われてきた言葉についても、小田監督はこれを否定しています。
「私はいないと思ってます。いるとするならば、自分自身の心が作り出してるもの。魔物を感じたら、自分の心が動揺してて生み出してるものなので、多分対応できない。あれを『すごいな、この雰囲気。俺らこんなところで野球できて幸せだよな』と思えたら、魔物に襲われることはないのかなと。いかに心をうまくコントロールして野球ができるか」
今年の優勝校は、私たちにどんなメッセージを送ってくれるのでしょうか。
残り3日間の熱戦が楽しみです。