栄木の”ひとり言”

【第178号】「東芝ブレイブルーパス東京」からの学び

ラグビーリーグワンは、リーチ・マイケル率いる東芝ブレイブルーパス東京の優勝で幕を閉じました。
実に14年ぶりの国内リーグ優勝となります。
それまでは優勝の常連チームだったのですが、この14年の間は長らく停滞期にありました。
いったいそのとき何があり、どんな変化が起きたのでしょうか。

ここで一つ、面白いエピソードがあったので紹介します。

今回の優勝に至るまで、同チームは長いトンネルの中にいました。
親会社の不祥事、売却、主力選手の放出…。
「自分たちのやっているラグビーが、現代のラグビーに追いついていないのではないか?」
自分たちの存在意義を見失いそうになったこともあったそうです。

「いろいろ失った。けど、その中でも残ったものは何か?」

そのような問いに対して出た答えが「激しい接点(コンタクト)」でした。

「時代の流れとともにラグビーのスタイルが変化しても、自分たちの原点は変わらない。」

このアイデンティティが、東芝を東芝たらしめ、「空中分解」を免れました。

ラグビーファンならずとも有名なリーチ・マイケルも、東芝に在籍していたからこそ「激しい接点」が磨かれあそこまで上り詰めたのではないかと筆者は想像します。

一度失いかけた流れを取り戻してきたタイミングで、今期、オールブラックスの主力選手が加入し、東芝ラグビーの「シンボル」でもあるリーチ・マイケルが主将に復活しました。
つまり、優勝に必要なピースが揃ったわけです。

このエピソードを通じてお伝えしたいこと、
それは、本当の「らしさ」とは、「足し算」ではなく「引き算」の中で現れてくること。
そして、「らしさ」があるからこそ、自身を見失わずにいられる…ということです。

筆者自身も、今でこそ何とか順調に仕事をやらせていただいておりますが、何もかもを失い「どん底」を味わった時期がありました。
その時に残ったものは、「自分にだけは負けたくない」という強い思いでした。
この気持ちが筆者にとっては「命綱」でした。

「何もかも捨て去った後でも、残るものは何か?」

それが、そのチームのカルチャーや、その人らしさにつながっていきます。
そして「らしさ」こそが、AI時代における「人間の強み」になってくると筆者は思います。