
今週、筆者がコーチングを担当しているあるプロ野球選手が、長い低迷期を抜け出し、待望のホームランを打ったという嬉しいニュースがありました。
もちろん、彼の努力が実を結んだ結果ですが、筆者が特に感じたのは、彼のメンタル面での大きな変化です。
日本では「メンタル」という言葉が必ずしもポジティブに受け取られないことがあります。
ですが、プレーやパフォーマンスにおいてメンタルの影響は非常に大きいと筆者は考えます。
例えば、気分が良い時には仕事がはかどり、パフォーマンスが向上します。
逆に、気分が乗らない時には仕事の効率も下がり、注意力も散漫になりがちです。
これは「心の持ちようや感情」がパフォーマンスに大きく影響を与える良い例です。
心から湧き起こる感情には喜怒哀楽が含まれ、不安、不満、憎しみ、嫉妬などのネガティブな感情や、感謝の心、愛情、喜び、楽しみなどのポジティブな感情があります。
これらはグラデーションのように多様で、言葉では表現しきれないものも多いです。
特に、失敗が続いたり、うまくいかないことが続く時、メンタルが強く問われます。
このような時、私たちは不安感に押しつぶされそうになりがちです。
しかし、ここで「自分はできる」と自分自身に言い聞かせるだけでは、心の波を抑えることは難しいです。
感情は自然と湧き起こる波のようなもので、意識的な努力だけでは制御が難しいこともあります。
ここで重要なのは、「感情はエネルギー」ということです。
感情のエネルギーを認め、それを行動の原動力に変えることが大切です。
たとえば、空腹感が強ければ、それだけ多くを食べる行動に出るように、感情のエネルギーをポジティブな行動に転化することが可能です。
しかし、「怒りが爆発したから、人を殴る」というネガティブな行動に出るのは望ましくありません。
感情のエネルギーを認めつつ、それを建設的な行動に転化する技術が求められます。
不安を感じることは、その不安を振り払うかのように一心不乱に取り組むエネルギーに変えるきっかけにもなります。
感情のエネルギーが枯渇したと感じる時、たとえば「目標を達成した後に気持ちが切れてしまった」という場合、それは行動力の低下につながりがちです。
これらの状態を理解し、感情と向き合うことで、感情の力を自分の味方につけることができます。
冒頭で触れた選手は、高校時代に自然にできていた「メンタルの力」を、プロ入り後の困難を経て、再びその感覚を取り戻し始めているように思います。
彼は元々素質があると言われています。
「メンタルの持つ力」を腹に落とし込んで理解した今、今後の活躍が楽しみです。