
筆者の楽しみの一つに、地方出張に行った際の「居酒屋巡り」があります。
特に食べログやGoogle マップで調べるわけでもなく、直感的に「なんか感じが良さそうだな」と思った店にふらっと入ってみることにしています。
今回ふらっと立ち寄った居酒屋は、香川県にある「惣菜居酒屋 まほろば」
佇まいが「昭和」な雰囲気がして、なんだか温かみを感じました。
ガラガラガラ〜
扉を開けると、店内は賑わっていて活気がありました。
一人カウンター席につき、いつもの通りビールとおつまみをオーダー。
誰かに話しかけるでもなく、メモ帳を片手に今日一日を振り返ったり、アイディアを練ったりしています。
すると店員のおばあちゃんが、カウンター越しから筆者に話しかけてきました。
「南京(なんきん)はうまいかね?まだちょっと時期が早いんだわ。」
最初は「何のこと?」と思いましたが、かぼちゃのことを「南京」と言うことを思い出しました。
「おいしいですよ。でも、ちょっと甘みが弱いかもしれないですね。」
筆者がそう返すと、
「そう、時期が早いのはまだ甘みが足りないんだ。後になったらもっと美味しくなるがらね。」
とおばあちゃんが言いました。
すると、別の店員さんが、「このおばあちゃん何歳に見えます?90歳なんですよ。」との一言。
「えっ?」
背筋もピンとして、手際よく盛り付けをしている姿に正直驚きました。
しかも、夜も9時過ぎ。もうお休みになってもいい時間です。
おばあちゃんは、昭和40年過ぎに店を開けて以来、60年近くカウンターに立ち続けているそうです。
流行り廃りの激しい時代において、一つのことを続けるのはすごいことです。
周囲が賑やかだったこともあって、そこまで長く会話はできませんでしたが、その中で筆者が心に刺さった一言がありました。
筆者が仕事をしているという話は一切していなかったのですが、
おばあちゃんが、おもむろにこう言いました。
「お兄さん、正直が一番や。正直にやっとれば商売は続く。」
筆者が仕事をしている中で、最近ぼんやり思っていたことが一瞬にして明瞭になり「ハッ」とさせられました。
そして、「おふくろの味」の料理のように、じわじわと心に染み入ってきました。
「そっか、だから南京(かぼちゃ)の味一つとっても、一見の客であっても、むげに扱わず相手がどう思っているか気にかけているんだな。」
また香川に行く機会がない限り、もうこのおばあちゃんと会うことはないかもしれません。
ただ、今回の出逢いにシンクロニシティ(意味ある偶然の一致)を感じました。
世の中では、政治とカネの問題に辟易したり、「やり損」「やりがい搾取」のように「正直者はバカを見る」という風潮が漂っているようにも感じます。
ですが、筆者は決して正直者はバカを見ないと思っています。
自分をごまかさず、自分に正直にちゃんと生きていれば、何よりも自分に報いがあることを実感します。
それは、金銭的な報酬とは限りません。
それは、心の充足や豊かな人間関係といった、精神的な報酬です。
まほろばのおばあちゃんからのメッセージを胸に刻み、今日一日を正直に生きていきたいと思う今日この頃です。