
元ニュージーランド代表(オールブラックス)のラグビー選手、
T・J・ペレナラ
ダン・カーター
読者のみなさまはご存知でしょうか。
サッカーに例えるならば、メッシやクリスティアーノ・ロナウド。
ラグビー界における、超スーパースター選手です。
そんな2人が、日本のラグビートップリーグ(現在はリーグワン)に加入したのは数年前。
2人の選手の加入は、チームに大きな躍進をもたらしました。
かたや最下位からの大躍進、かたや圧倒的な強さでの優勝。
この2人がチームにどれだけのインパクトをもたらしたかは、
2人が去った翌年のチームの凋落ぶりからも窺えます。
試合中のプレーもさることながら、
2人に共通した凄さとは、「プレー以外での周囲への影響力」です。
その凄さが分かる2人のエピソードを紹介します。
(いずれも、筆者が関わっているプロラグビー関係者から直接聞いた話です)
T・J・ペレナラは、「自己規律」をチームに植え付けました。
世界のトップ選手にも関わらず、大阪への練習場へは高級車ではなく通勤電車でつり革につかまって移動。
常に誰よりも早く練習場に到着し、準備に2時間も費やしてグラウンドに立っていたそうです。
そんな行動習慣について、ペレナラはこう答えています。
「みんなモチベーションベースで物事を考えるけど、僕は一貫性と規律を大事にしているんだ。
もし、やる気をベースに考えると、さぼりたい日も出てくるかもしれないけど、僕は選手生命は長くないと考えているし、一貫性と規律をとにかく重んじているので、さぼることはないよ。内容に強弱があったとしても。」
ムラのない日常が、ムラのないプレーを生み出していたといっても過言ではありません。
彼の、試合以外での振る舞いによって、最下位に沈んだNTTドコモの選手たちが「自分たちもこのままじゃいけない」と奮い立たされたのは想像に易いです。
そしてもう一人、オールブラックスの英雄、ダン・カーター。
チーム(神戸製鋼)に加入して間もない頃のエピソードです。
メンバーでの食事中の時のこと。
他の外国人選手が、外国人同士で固まって食事をしている中、ダン・カーターは自ら日本人選手たちの輪の中に入り、積極的にコミュニケーションを取っていたそうです。
また、オフサイトでのバーベキューの時のこと。
労をいとわず、若手選手に交じって準備や後片付けを手伝っていたそうです。
ラグビー界でも「Top of top」の選手。
普通なら、他の選手が自分のもとへ来るのを待っていたり、雑用は他のメンバーに任せてもおかしくありません。
このような彼の振る舞いが、他の選手に「自分がどれだけちっぽけなプライドでふんぞり返っていたか」ということを気づかせたことでしょう。
これがチームに「求心力」と「一体感」を生みました。
この2人のエピソードから言えること。
それは、彼らがスペシャルだからできたのではありません。
いずれも「やろうと思えば誰でもできる当たり前のこと」を実践していただけです。
裏を返せば、このような「心構え」があったからこそ、一流を超えた「超一流」の存在になったのだと思います。
多くの人は、成功を掴むために努力をしますが、
成功して名声を得たら、周囲からちやほやされてふんぞり返ってしまうものです。
ふんぞり返るとは言わずとも、「自分は他者より優れている」という想いが、心にスキを生んでしまうものです。
「何かを得るためにやる」のではなく、
「人としてやる」ことの大切さを、2人から教えられました。