栄木の”ひとり言”

【第147号】習慣力

先日、脳科学を専門としている会社の社長と話をしていて、「習慣」に関して、興味深い話をしていました。

聞くところ、同社の「脳トレ」を継続的に利用すれば、脳機能が改善されることが証明されることが分かっているにも関わらず、「続く人」と「続かない人」がいるというのです。

それは、「効果を実感する・しない」や「飽きる・飽きない」の違いではなく、単純に「習慣として組み込まれるか・そうでないか」の違いだというものです。

「歯磨き」を思い浮かべれば分かりやすいと思います。

私たちは歯磨きをする時に、「効果があるかどうか?」はいちいち考えません。
「歯磨きが飽きた」といって止める人もいませんよね。
歯磨きを意志の力を必要とせず、ほぼ自動的(習慣的)に行っているわけです。

「習慣」というのは、「何かをやらなければ」という「意志」の力を必要とせず、ほぼ自動的に行っている言動や思考です。

一日のうちで、常に判断や決断に迫られて迷ってばかりいたら、疲れてしまいますよね。
自動的にあまり考えずに行うことで、脳は疲労を起こさずに済みます。

「悪いな習慣はなるべく遠ざけて、良い習慣を取り入れたい」

そう願う人は多いはずです。

悪い習慣の代表としては、過度な飲酒・喫煙・ギャンブル・スマホ依存などは分かりやすいでしょう。
良い習慣の代表は、ウォーキング・運動・読書などが挙げられます。

習慣は、言動だけでなく、「思考」についても同じことが言えます。
悪い思考習慣の例として、「他責」「他人とすぐ比べる」「しつこい怒り」など、
良い思考習慣は、「当事者意識」「自分にフォーカス」「思いやり」などが挙げられます。

「そうなりたい。でも、そうなれない。」

とお悩みの方に、今回は一つの解決策をご提案します。

それは「習慣力」という考え方です。

習慣力とは、簡単に言えば、ある行動を習慣づけたり、不要な習慣を改善したりするための力です。

たとえば、駅の構内で、「エスカレーター」を使うのが「習慣」とすれば、
健康のために「階段」を使うのが「習慣力」です。

エスカレーターと階段があったら、エスカレーターを使うのが一般的です。
ですが、日常的に階段を使っている人であれば、階段を使うのにそこまで「意志の力」を要しません。
また、「また階段を使わないと気持ち悪い」状態になっています。

これが「習慣力」のイメージです。

「不要な習慣」を遠ざけ、「良い習慣」を取り入れるために、知っておくと良い法則があります。

それは「1/t(時間)の法則」というものです。
法則に関する理論的な説明は割愛しますが、「習慣」との関係で分かりやすく説明すると以下の通りとなります。
――
スマホを触るから、また触りたくなる。
その時間間隔(t)が短ければ短いほど、この先も同じような頻度で触ることになる。
反対に、触らないで遠ざけていれば、だんだんとその間隔も遠ざかっていく…というものです。
――
ですから、不要な習慣を遠ざけたいとき、一気に止めようとしてもまずうまくいきません。
徐々に、少しずつ遠ざけていけば良いのです。

反対に、良い習慣を取り入れたいときも、いきなり高い負荷をかけてもうまくいきません。
「1日1回」「1分くらい」のところから少しずつ負荷を上げていくのがベターです。その方が長続きします。
一気に変えようとするのではなく、徐々に頻度を増やし、間隔を短くしていくことが大事です。

良くも悪くも、習慣は時間とともに強化され、続いていきます。
最初は習慣を始めるのが少し難しいかもしれませんが、徐々に継続することで、その習慣は自然と生活に組み込まれ、持続的なものになります。

筆者も、2017年から週1回のコラムを初めて通算で6年になります。
常に「意志の力」は必要で、歯磨きのように自然にできるわけではありませんが、少なくとも「やらないと気持ち悪い」状態にはなっています。
読者のみなさまへの「一服の良薬」になってほしい…という想いで始めたコラムですが、同時に、自分の「アウトプット力」も養われていると感じます。