栄木の”ひとり言”

【第120号】新入社員研修

新年度が始まって10日が経過しました。
筆者は先週、関東、四国、北陸を行脚して新入社員研修の講師を務めてまいりました。

人生の節目に立ち会わせていただけることを光栄に思いますし、
何よりも、若い人たちから良い刺激をもらいます。

一方で、以前に比べて感じることは、
全体的に「おとなしい」というか、「覇気を感じない」という点です。

どうも「緊張しているから」という理由ではなさそうです。

新入社員なら、誰しも「期待」と「不安」が入り混じるものですが、
ここ近年は、「不安が大きい」という若者が増えていると感じます。

実際に、
「自分がこの会社でやっていけるか不安」
「自信がない」
「明確な目標がなく、漠然とした不安がある」
という声を多く聞きました。

それもそのはず。

社会に出る前に、多くの「企業のダークサイドな情報」に触れている若者。
(例えば、最近では「企業の『口コミ』サイト」の情報を見て、企業選びをする学生が増えています。)
そんな情報に触れれば触れるほど、不安が増幅するのも頷けます。

また、「自信がない」という気持ちも分かります。
SNSやYouTubeなどで、常に比較に晒されるようになりました。
また、美容ブームにも代表されるように、すっぴんの自分、ありのままの自分を見せることに抵抗があるようにも感じます。
そんな数々の他者との比較が、「自分はほどほどでいい」という意識を刷り込ませているようにも感じます。

そんな彼らにとって、
出る杭になって、リスクを負うことよりも、
出る杭にならず、おとなしくいる方が得策と思っているのかもしれません。

そのような世代の若者ですから、研修中に意見を求めても、なかなか手が上がりません。
ですが、考えていないわけではありません。
指名すると、きちんとした意見を述べてくれます。

「自ら手を挙げて、意見を言う」

という行為自体に抵抗があるのだと思います。

ですので、筆者は新入社員が発言してくれたことに対しては、まずは受容、肯定し、拍手を送ります。

「あ、自分は意見を言っていいんだ」

という「心理的な安心感」を持ってもらうことに注力します。
すると、実はいろんな意見や考えを持っている彼ら。徐々に意見が出始めてきます。

また、研修中にはこんなたとえ話もします。

「『譲ってやれよ』と言われて譲るのって、抵抗ありますよね。
 ただ、自ら『譲ろう』と思って譲れば、納得感はありますよね。
 仕事もまったく同じです。やらされるのは辛いです。
でも、自ら率先してやると同じ仕事でも楽しく思うものです。」

そうすると、「受け身」と言われてきた彼らも、「能動的に動いた方が成長できるかも」と気づいてくれる感触はあります。

また、「転ばぬ先の杖」を多く与えられてきた世代。
「挑戦して失敗から学ぶこと」よりも、
「失敗しないために情報収集をすること」に慣れています。
ですので、転ぶ、失敗することへの耐性は、昔に比べると明らかに低くなっています。

ただし、今の世の中は「仮説→実験→失敗」のサイクルを通じてでしか、最適解にたどり着けないようになってきています。

そこで、筆者は自身の「しくじり体験」を話すことで、

「あ、転んだっていいんだ」

という認識を持ってもらうよう努めています。

「自発性」
「能動性」
「挑戦心」

一言で表すと「自律」です。
筆者自身、新入社員研修では、彼らに「自律」のマインドセットになってもらうよう努めています。

企業は、世の中(顧客)の困りごとを解決するために存在します。
そのためにも、「世の中(顧客)は何に困っているのか?」という問いを自ら持ち、
その困りごとを「どうしたら解決できるか」を自ら考え、
挑戦・失敗を繰り返しながらも、あきらめずに解決にたどり着こうとする姿勢が求められます。

「飽和社会」とも言われる昨今ですが、
「解決すべき問題」はゴロゴロと転がっています。

社会の未来を担っていく若者には、当事者意識を持って、
問題に立ち向かってもらいたいと思います。

もちろん、筆者もその当事者であります。