“火が灯る” 研修レポ

「Z世代を自律型に」――現場の声とデータが示すヒント

はじめに

先日、某大手企業の2年目社員向けに「自律」に関する研修を実施しました。
参加者はまさにZ世代ど真ん中。彼ら・彼女らが現場で抱えるリアルな悩みと向き合うなかで、今の若手育成に必要なヒントが浮かび上がってきました。

研修現場で聞いた「生の声」

ワーク中の対話のなかで出てきたのは、次のような率直な声です

  • 「この仕事、やる意味あるの?(ムダ仕事多すぎ)」
  • 「自分のキャリアにモヤモヤがある(今の仕事が将来にどうつながるのか見えない)」
  • 「いわゆる“昭和世代”の上司とのコミュニケーションが難しい」
  • 「忙しすぎて自分の時間が取れず、ワークライフバランスに悩む」

こうした悩みは、単なる愚痴や不満ではなく、“自分なりの意味付け”や“納得感”を求める真剣なサインだと感じます。

さらに、他研修でもよく聞く「Z世代あるある悩み」を挙げると――

  • 「成果よりプロセスを大事にしたいけど評価は成果のみ」
  • 「SNS的な即レス文化に慣れていて、上司や先輩の“待ち”の文化がつらい」
  • 「やりがいを感じたいけど、目の前の仕事がその理由を見いだせない」
  • 「正解がない仕事で、どこまで自分で決めていいのかわからない」

アンケート結果が示すもの

研修後に実施したアンケートでは、参加者から以下のような結果が得られました:

  • 満足度:「大変満足」約60%、「満足」約40% → 肯定回答率100%
  • 理解度:「よく理解できた」約70%、「理解できた」約27%、「理解できない部分があった」約3% → ほぼ全員が内容を理解。
  • 実用性:「大変役に立つ」約65%、「役に立つ」約35% → 肯定回答率100%
  • 講師運営への満足度:「そう思う」約80%、「まあまあそう思う」約20% → 肯定回答率100%

自由記述では、
「仕事への向き合い方が変わった」「新たな気づきが多い」「会社方針も踏まえていてわかりやすかった」など、“内面の変化”や“自分ごと化”を感じたコメントが多数見られました。
実用性の理由としては、「すぐ実践できる」「モチベーションが上がった」「他者との関わり方を学べた」など、行動変容への意欲が高いことがうかがえました。

講師として大切にしていること

私が心がけているのは、とことん受講者視点に立つことです。
言葉選びも、伝え方も、自分が新人だった頃を思い出しながら設計します。
正直に言えば、私は2年目のころ将来のことなんてまったく考えていませんでした。
だからこそ、いま目の前で真剣に悩み、考えている彼らを心から「すごいな」と思い、研修のなかで何度もその素晴らしさを伝えます。

その上で、彼らが見落としがちな盲点を提示し、気づきを促します。
たとえば「キャリア=長期戦略」という固定観念から、「キャリア=小さな行動の積み重ね」へと視点をずらしてもらう、といった形です。
結果として、今回のような高いアンケート評価につながりました。

「頭でわかる」研修から「心に残る」研修へ

Z世代は情報のシャワーを浴びながら育ってきた世代です。
頭で理解したことは、次々に新しい情報で上書きされていきます。
しかし、強い気づきや自己発見は、長く心に残り、行動変容の起点になります
今回の研修でも、「自分の仕事の意味付け」「他者との関わり方」など、自分ごととして捉え直す瞬間が多くあり、その一つひとつが“自律型人財”へのスイッチになっていると感じました。

人財開発担当の方への示唆

今回の経験から見えてきた、Z世代育成のポイントは以下の3つです:

  1. 納得感と即実践性
     「なぜやるのか」と「どうやるのか」を同時に提示し、本人の言葉で再定義させることがカギになってきます。
  2. 内省+言語化の場をつくる
     グループワークや1on1など、考えを言語化する仕組みが“自律の筋力”を鍛えます。
  3. 研修後のフォローアップを設計する
     行動記録・ペアコーチング・短時間1on1など、実践と内省を繰り返す環境を整えることで、研修の効果が定着します。

まとめ

Z世代を自律型に育てるには、旧来の「詰め込み・教える」型から、「気づかせ・巻き込む」型へのシフトが必要です。
彼らの強み(スピード感・デジタル親和性・自己発信力)を活かしつつ、“自分軸”と“他者との協働”を行き来できる力を養うことが、これからの人財開発に求められると考えます。

成長とは、新しいスキルを獲得して自分を変えることではなく、何かを手放して
ー 最も大切にしている自らの核心部分さえ手放して ー
自分が何者になれるのかを発見することなのである。

デクラン・フィッシモンズ