人と組織の”葛藤”物語

【第25回】SF 包含:輪の外にいる人が、まず目に入る──包含という“入れる力”

飲み会の席で、会話に入れていない人がいると気になって仕方ない。会議で一度も発言していない人に、つい「○○さんはどう思います?」と振ってしまう。新しいメンバーが来ると、頼まれてもいないのに輪の中へ引き入れている──そんな人、あなたのチームにいませんか?

今回のテーマは、人間関係構築力の領域にある「包含」。輪を広げ、人を“入れる”ことに突き動かされる資質です。

■「包含」って、どんな資質?

一言でいうと、「仲間はずれを、見過ごせない」。

多くの人は輪の“中”を見ていますが、包含の人は輪の“外”を見ています。誰が入れていないか、誰が取り残されそうか──それが真っ先に目に入る。そして「こっちにおいでよ」と、自然に輪を広げてしまう。選ばれた少数のグループより、誰でも入れる大きな輪の方が、ずっと心地いいのです。

包含がTOP1の方がこんなことを言ってました。「部署に中途入社のメンバーが来るたび、ランチに誘い、社内の人脈を紹介し、雑談の輪に混ぜていくんだよ。特別なことをしている意識はないんだ」。そのチームの新人定着率は目に見えて高く、輪に入れてもらえた経験は、想像以上に人を支えます。

「八方美人」ではありません

包含の人は、ときにこう見られます。「誰にでもいい顔をする」「基準がなく甘い」と。

でも、根っこにあるのは処世術ではなく、哲学です。「人は誰も、等しく大切にされるべきだ」という信念。だから排除や選別に、理屈より先に違和感が湧く。誰かを輪に入れるのは、好かれたいからではなく、外にいる人の心細さが“自分ごと”として感じられるからなんです。

似た資質に社交性がありますが、向きが違います。社交性は「新しい人と出会いたい」、包含は「今ここにいる人を、置いていきたくない」。輪を広げる動機がまったく別物です。

包含の強みと盲点

強みは、チームに「ここにいていい」という感覚──今でいう心理的安全性の土台を、自然体でつくれること。多様なメンバーが混ざる組織ほど、包含の存在価値は大きくなります。

一方の盲点は、「全員を入れる」ことにこだわるあまり、絞り込みや選抜が必要な場面で決断が鈍ること。役割や実力で線を引くべきときにも、外すことへの心苦しさが先に立ってしまう。また、少数精鋭で深く付き合いたい人からは「広く浅い」と映ることもあります。

■包含をどう活かす?

【包含が高い本人へ】
・ 「入れること」と「任せること」を分けて考える。輪に入れるのは全員、役割を任せるのは適した人──この2段構えなら、優しさと成果は両立します。
・ 選抜や絞り込みの場面では、「外す」ではなく「今回は別の輪を用意する」と捉え直すと、決断の心理的コストが下がります。

【包含が高い人と働く方へ】
・ 新人の受け入れやチームの融合が課題のとき、この人に橋渡し役を頼むと、驚くほど滑らかに進みます。
・ 「甘い」と評する前に、その人が拾い上げている“輪の外の声”に耳を傾けてみてください。組織の見落としが、そこに詰まっています。

■おわりに

強いチームをつくるのは、選び抜く力だけではありません。

「あなたも、ここにいていい」と言える人がいるチームは、静かに、確実に強くなっていくのだと思います。