人と組織の”葛藤”物語

着物というお守り

着物が、好きです。

でも最初からそうだったわけではありません。
母が着付け講師だったこともあり、着物は身近なものでしたが、洋服に比べると動きにくいイメージがあって、自分が好んで着るものとは思っていませんでした。

きっかけは、イギリスへの留学でした。

もともと私はかなり内気で、人と親しくなるのに時間がかかります。
留学先でも最初はなかなか友達ができず、自分から声をかけるのに、ものすごいハードルを感じていました。話題を何にすればいいかも、よくわかりませんでした。

そんなとき、ふと思いたって着物を着て街を歩いてみました。
すると「いいね」と声をかけてもらえました。
そこで、学校にも着ていくと、喜んでもらえて、話しかけてもらえて、少しずつ友達ができていきました。

今でも人に話しかけるのは得意ではありません。
でも趣味のカードゲームのイベントなどに着物で行くと、向こうから声をかけてもらえたり、覚えてもらえたりします。
苦手なことは苦手なままでも、工夫でのりきれることがある。
着物がそのことを教えてくれました。

昨年、私に着付けを教えてくれた母が亡くなりました。
私とは正反対の、社交的で人懐っこくて、誰からも好かれる人でした。

母が残してくれた着物に袖を通すたびに、これは母が内気な私のために残してくれたお守りなのかもしれない、と思います。
人と関わることが苦手な私を認め受け入れてくれる、やさしいお守り。

着物を羽織るたびに、少し勇気が出る気がします。