栄木の”ひとり言”

【第284号】「自律」はきれいごとではない

今週、ある不動産会社で研修を行ってきました。

対象は、入社2年目の若手社員。テーマは「自律型人財」です。

不動産営業の最前線は、常に時間との勝負です。
タイミングが命。
一歩遅れれば、案件は他社に取られる。
お客様対応、社内調整、契約準備、数字のプレッシャー。

ギラギラと前を向く人もいれば、数字に追われて疲弊している人もいます。
そんな若手たちを、丸一日研修で拘束する。

研修開始の直前まで、受講者は電話対応に追われ、PCを開いて仕事をしていました。
休憩時間も同じです。
顧客対応、社内連絡、案件確認。
まさに、現場は待ってくれません。

正直、筆者にもプレッシャーがありました。

現場感のない内容を出せば、一瞬で見抜かれる。
営業の最前線で戦っている彼らに、きれいごとを語っても届かない。
しくじれば、つるし上げにあうかもしれない。

そんな緊張感の中で始まった、自律型人財研修。

しかし、ふたを開けてみると、想像以上に前向きな反応がありました。

「現在、買付が取れない、取れても流れる、契約が出来ないと、結果が出ておらず、モチベが乱高下している状況であったため、1年目のOSをアップデートする機会となった」

「2年目になり、漠然ともやもやしていた気持ちや不安を言語化することができた。同期が同じような壁にぶつかっていること、その壁にぶつかった理由を考えることができた」

「小手先の営業スキルではなく、マインドや根本の考え方をアップデートしていく必要があると学んだ」

「営業手法よりもその土台について学ぶことができ、普段意識しない点に目を向けることができた」

今回、筆者が改めて感じたのは、営業テクニックの前にある「土台」の大切さです。

もちろん、テクニックは大事です。
トーク、提案力、クロージング、顧客対応。
営業において、道具はいくつあってもよいと思います。

ただ、どれだけ道具を増やしても、本人の状態が崩れていれば、うまく使えません。
数字に追われて焦る。
案件が重なって優先順位が見えなくなる。
相談すべきタイミングを逃す。
自分では頑張っているのに、なぜか成果につながらない。

そういう場面は、誰にでもあるのだと思います。

だからこそ、今回の研修で扱った「自律」は、きれいな理想論ではなく、むしろ営業現場で踏ん張るための足場のようなものだと感じました。

自分で考える。
でも、ひとりで抱え込まない。
必要な時には周囲に相談する。
そして、うまくいったことも、うまくいかなかったことも、次に活かしていく。

言葉にすると当たり前のようですが、忙しい現場の中でこれを続けるのは簡単ではありません。

筆者自身も、この「自律」という考え方に何度も立ち戻っています。
目の前の成果に振り回されそうになる時ほど、自分の状態を整える。
判断の軸を持つ。
時に周囲の力を借りる。
そして、また前に進む。

今回うれしかったのは、受講者だけでなく、事務局の皆さまもこのテーマに強く共感してくださったことです。

研修を一度実施して終わりではなく、ここから現場の中でどう育てていくか。
その会話が、すでに始まっているように感じます。

自律という言葉が、研修の中だけで終わらず、日々の仕事の中で少しずつ使われていく。
若手が迷った時に立ち戻れる言葉になる。
上司や先輩が、関わり方を考えるきっかけになる。

もしそんな小さな変化が生まれていったら、とても面白いと思います。

ここからどんなムーブメントが起きるのか。
今から、とても楽しみにしています。