先日、車をガッツリぶつけてしまいました。
免許を取ってから26年。
これほど派手にやったのは、生まれて初めてです。
場所は浅草の細い路地。
一方通行の道を右折しようとしたのですが、思った以上に狭くて曲がれません。
何度切り返しても、車体を傷つけそう。
仕方なく、バックして元の場所まで戻ることにしました。
浅草の裏路地は、本当に狭いです。
壁も近い。
人や自転車が来るかもしれない。
右を見て、左を見て、後ろを見て。
助手席に座っていた妻にも降りてもらい、
「オーライ、オーライ」
と誘導してもらいながら、かなり慎重に、ゆっくり戻りました。
そして、ようやく元の場所まで戻ることができました。
「ふぅ、戻れた」
あとは一方通行の道を左折して、大通りに出るだけ。
サイドミラーを見て、ハンドルを左に切った、その瞬間。
ガリ。
助手席に乗ったばかりの妻が、
「今、やったよ……」
筆者は一瞬、何のことかわかりませんでした。
(妻はこれまで何度か車をぶつけているので、一瞬でわかったようです…)
車を降りてみると、そこには高さ50センチしかない小さな車止め。
完全に「死角」でした。
センサーも鳴らず、車には見事なまでの傷。
……やりました。
後から振り返ってみると、不思議です。
一番危なかったのは、細い路地をバックしていたときのはず。
そのときの筆者は、
「ぶつけるかもしれない」
と、ものすごく集中していました。
ところが、「戻れた」と思った瞬間、緊張から一気に解放された。
ぶつけたのは、まさにその直後でした。
これは、「登山」にも少し似ています。
山頂を目指しているときは、誰でも慎重になります。
足元を見る。
体力を考える。
危険な場所では特に集中する。
そして、ようやく山頂に到着。
「着いた!」
でも、登山はそこで終わりではありません。
本当のゴールは「下山した時」です。
でも、脳内では「山頂がゴール」だと思ってしまう。
「事故は下山時に多く起きている」と言われるゆえんです。
今回の筆者も、まさにそうでした。
以前、競泳について興味深い話を聞いたことがあります。
100メートルを泳ぐとき、「あと少しでゴールだ」と思った瞬間に、
脳が「ゴール」と認識し、力が抜けやすくなる。
だから、100メートルで終わるのではなく、あと10メートル泳ぐ感覚を持つ。
サッカーの試合でも、「1vs0」よりも、「2vs0」でリードしている時の方が逆転を許しやすいと聞いたことがあります。
「2vs0」を「セーフティリード」と認識してしまうと、脳がゴールと判断し力がふと抜けてしまう。
だから1点取られると、焦る。パニックになる。
でも、相手が勢いづいて流れを止められず逆転を許す…。
だから、「試合中にセーフティはない。終わって初めて安心できる」と思って攻めの姿勢を保ち続ける。
そんな考え方です。
仕事でも、スポーツでも、日常生活でも。
人間、緊張状態が続けば、少しでも早く安心したくなります。
この緊張から早く抜け出したい。
「もう大丈夫」と思いたい。
だから、本当のゴールより少し手前で、
無意識に「ここまで来たから大丈夫」と区切りをつけてしまうことがあるのかもしれません。
だから、何かに取り組んでいるとき、
「自分は、どこをゴールだと思っているのか?」
は、ときどき確認した方がよさそうです。
今回の筆者なら、
「細い路地からバックで戻れた」
が、いつの間にかゴールになっていました。
でも、本当のゴールは、
「安全に大通りまで戻ること」
あと100メートルほど先だったのです。
今回、筆者は高さ50センチほどの小さな車止めに、
思いがけない問いを突きつけられました。
「今、自分は、どこをゴールだと思っているだろう?」
授業料は、なかなか高くつきそうです……(笑)。