栄木の”ひとり言”

【第285号】”迷いの森”からの脱出方法

コラムで何回か触れている通り、あるプロ野球選手と定期的に1on1コーチングをしています。

先日の1on1で、彼は深い迷いの中にいました。

新しい打ち方を試しては、「何か違う」と手放す。
結果が出ないため、別の理論や方法を探す。
しかし、探せば探すほど、何を信じて打てばよいのか分からなくなっているようでした。

「試行錯誤というか、”迷いの森”の中にいる感じがして、定まっていない」

そこで筆者は、彼に問いかけました。

「もう一人の“鬼の自分”が、今の自分を見たら、何て”喝”を入れると思う?」

しばらく沈黙した後、彼が最初に挙げたのは、技術の話ではありませんでした。

「もうちょっと、(身の回りを)きれいにした方がいいんじゃね?」

聞けば、ロッカーや部屋が少し散らかっているとのことでした。

もちろん、部屋を片づければヒットが打てる、という単純な話ではありません。
ただ、状態が悪いときほど、人は自分では変えられない大きな答えを探しがちです。

このまま自分はダメになってしまうのではないか?
何かもっと良い方法はないか?
何か一気に変わるきっかけはないか?

しかし、答えを探し続けるほど、迷いが深くなることもあります。

そんなときに必要なのは、新しい何かを加えることではなく、
今すぐ自分で変えられることに着手することなのかもしれません。

身の回りを整える。
目の前の一つを終わらせる。
気づいたら行動を起こす。

小さな行動によって、自分の中にスイッチが入ります。

身の回りを整える
↓
自分で変えられることに着手する
↓
迷いが減り、決断しやすくなる
↓
打席で狙いを定め、強く振れる
↓
良い打球やヒットが出る
↓
手応えとエネルギーが戻る
↓
さらに身の回りを整えたくなる

1on1を実施したその日、彼は久しぶりにヒットを打ちました。

さらに次の試合でもヒットを放ち、全体的に打球に力が戻ってきた印象を受けました。

そして試合後、彼からこんな連絡が届きました。

「部屋、めっちゃきれいになりました!」

筆者は、この言葉がとても印象に残りました。

ヒットが出たから部屋を片づけられたのか。
それとも、部屋を片づけたから打席が変わったのか。
正確な因果関係は分かりません。

ただ一つ言えるのは、日常とパフォーマンスは、決して別々ではないということです。

状態が悪いとき、人は面倒なことを後回しにし、気晴らしに逃げ、自分では変えられない答えを探します。
それが、さらに迷いを深くします。

反対に、小さくても意図的な行動を一つ起こすと、エネルギーが戻り始めます。
そのエネルギーが次の行動を生み、やがて良い循環へと変わっていきます。

迷いの中にいるときこそ、自分に問いたいものです。

「もう一人の“鬼の自分”は、今の自分にどんな”喝”を入れるだろう?」

大きな答えは、すぐに見つからないかもしれません。

それでも、散らかったものを一つ片づけることはできます。

流れを変えるのは、人生を変えるような大きな決断ではなく、
目の前にある小さな一つの行動なのかもしれません。