栄木の”ひとり言”

【272号】「アスリートの最前線」からの気づき②

あるプロ野球チームのスタッフの方から、こんな話を伺いました。

バッターの打球速度を上げ、飛距離を伸ばすために、チームで科学的なトレーニングメニューを導入しています。
やれば確実に伸びる。
選手も真剣に取り組み、成果も出ている。とても合理的な取り組みです。

しかし、その現場ではある課題が浮かび上がってきたといいます。

それは、選手が二極化していくことです。

ひとつは、自分で考えられる選手。
調子が悪いときに自分で原因を探し、練習を工夫して修正できるタイプです。

もうひとつは、言われたことはきっちりできる選手。
与えられたメニューは完璧にこなしますが、崩れたときに戻し方がわからないタイプです。

不思議なことに、後者の選手は決して能力が低いわけではありません。
むしろ身体能力が高く、調子が良いときは圧倒的な結果を出します。
ただ、相手や状況が変わると急に打てなくなる傾向があると言います。

その理由は明快です。

これまで「教わった通りにやればうまくいく」という成功体験を重ねてきたからこそ、
“自分で考える”よりも、“外に正解を求める”クセが身についてしまうのです。

この構造は、スポーツに限った話ではありません。
読者のみなさまにも思い当たる節はないでしょうか。

受験勉強で見たことのない問題に出くわした瞬間、「これ習ってない」と思って固まってしまう。本当は考えれば解けるかもしれないのに、そこで思考が止まってしまう。

仕事で与えられた目標はきっちり達成できる。
でも、「自分で目標を決めていいよ」と言われた途端、何を目指せばいいのか分からなくなる。

人生についても同じです。
本当は正解なんてないはずなのに、どこかにある「正しい生き方」を探してしまう。

実は、これらはすべて同じ構造を持っています。
正解を「自分の外側」に求める構造です。

なぜこうなってしまうのでしょうか?

それは今までそれでうまくいってきたからです。
「言われた通りにやる → 結果が出る → 評価される」。
この成功体験が積み重なると、外に正解を求める習慣が身に付き、自分と向き合う機会が少なくなってしまいます。

しかし環境は常に変化します。
指示がないときでも、調子が崩れたときでも、自分で修正する力が求められます。
そのとき鍵になるのは、自分の内側に問いを投げかけることです。

・うまくいっている理由は何か?
・うまくいかなかった理由(真因)はどこにあるのか?
・今、自分は何を感じているのか?
・どこにモヤモヤや違和感があるのか?

こうした問いを投げるだけで、次に同じようなことが起きたとき、自分なりの方法で対応できるようになります。

指示通りに動く力は、それだけで十分な強みです。

ただ、環境や条件が変わる現代では、「自分と向き合い、自分なりに考える時間」を持つことが、それ以上に大切になっていると実感します。

「自分も後者(言われたことはできる人)だったかもしれない」と思ったなら、気づいた時点で大きな一歩と思います。

次に何かうまくいかなかったときは、AIや誰かの答えを探す前に、自分に問いかけてみてはいかがでしょう。

それが、迷いを振り払い、伸び悩みの壁を越える最初の一歩になるはずです。