栄木の”ひとり言”

【第287号】「質問力」の高め方

「どうしたら質問力が高まりますか?」

今週、管理職向けの研修を実施していると、こんな質問をいただきました。

では、そもそも「質問力」とは何でしょうか。

質問力とは、誤解を恐れずに言えば「相手の行動を変える力」です。

こう言うと、少し強く聞こえるかもしれません。

もちろん、相手を思い通りに動かすという意味ではありません。
問いを通じて、相手が自分のものの見方に気づき、自分で行動を選び直すきっかけをつくる。
そういう意味での「行動を変える力」です。

管理職の方々が質問力を高めたいと思う背景には、
部下の本音を引き出したい、
部下自身にもっと考えてもらいたい、
部下の主体性を高めたい、
そんな思いがあります。

特に今は、働くことへの価値観が本当に多様になっています。

仕事を通じて成長したい人もいれば、プライベートを大切にしたい人もいる。
もっと任されたい人もいれば、急に任されると不安になる人もいる。
飲み会で仲良くなりたい人もいれば、できれば家に帰って静かに過ごしたい人もいる。

だから、自分の価値観を相手に押し付けるわけにはいかない。
でも、その考え方でいられると、どうしても足並みが揃わない…。

だからこそ、一人ひとりの思いや考えを引き出しながら、目線を合わせていくことが重要になります。
ただ、これがなかなか難しい。

そこで、強制せずに相手の行動を変える、質問力のニーズが高まっているのだと思います。

では、どうすれば質問力は高まるのでしょうか。

一般的には、質問の型を学ぶこと、実際に使ってみること、質問に関する本を読むことなどが挙げられます。
もちろん、それらも大切です。

ただ、筆者は少し違った角度からお伝えしています。

それは、相手に投げかける質問の前に、
まず自分自身が無意識に投げかけている「自問自答」に目を向けてみることです。

私たちは日々、頭の中でいろいろな問いを回しています。
日常的なところでいえば、たとえばこんな問いです。

「今日は何を着ていこうかな?」
「お腹が空いたな。お昼ご飯は何を食べようかな?」
「週末は何をしようかな?」

こうした問いに対して、自分なりに答えを見つけていく。これが自問自答です。

そして面白いのは、人それぞれ、自問自答のパターンがだいたい決まっているということです。

問いのパターンが決まっているということは、そこから出てくる答えも、だいたい決まってきます。

筆者の場合、「お昼ご飯は何を食べようかな」と考えたときに、だいたい浮かんでくるのはラーメンかチャーハンです(笑)

つまり、問いがいつも同じだと、答えもいつも同じになりやすいのです。

では、同じ問いに少しだけ変化球を加えてみるとどうでしょうか。

「ちょっとイメチェンするとしたら、今日は何を着ていこうかな?」
「今まで行ったことのないお店の中から選ぶとしたら、お昼ご飯は何にしようかな?」
「週末、デジタルデバイスに一切触れずに楽しめることは何かな?」

こう問いを変えると、浮かんでくる答えも変わってきます。

問いが変わると、答えが変わる。
答えが変わると、行動が変わる。

実は、これが行動変容の出発点なのだと思います。

これは部下との対話でも同じです。

自分がそうであるように、相手の自問自答も、案外ワンパターンになっていることがあります。
その問いが前向きな自己解決につながるものであればよいのですが、場合によっては、思考の堂々巡りを生み出してしまうこともあります。

たとえば、職場で誰かの言動にストレスを感じたとき、こんな自問自答が回ることがあります。

「なんであの人は、いつもああなんだろう?」

気持ちはとてもよくわかります。

上司、部下、同僚、お客様。
仕事をしていれば、「なんでそうなるかなあ」と思うことはあります。

ただ、この問いは、筆者が言うところの「ノーアンサークエスチョン」、つまり答えの出ない問いです。

この問いをぐるぐる回し続けても、出てくるのは自分の次の一手ではなく、相手への決めつけになりがちです。

「あの人は、自分勝手だ」
「あの人は、こちらの気持ちをわかっていない」
「あの人は、結局変わらない」

もちろん、そう感じること自体を否定する必要はありません。
人間ですから、腹が立つこともあります。納得できないこともあります。

ただ、その問いを回し続けても、自分の行動は変わりません。
なぜなら、主語が「相手」のままだからです。

だからこそ、聞き手である上司の役割が大切になります。

いきなり正論で返したり、「それはあなたにも原因があるんじゃない?」などと言ってしまうと、相手は心を閉ざしてしまいます。
まずは、その人の思いをしっかり最後まで聴くことです。

そのうえで、問いの向きを少しだけ変えてみる。

たとえば、こんな質問です。

「あの人を反面教師として見たとき、そこから学べることは何だろう?」

この問いは、主語が相手ではなく、自分に戻っています。

「あの人はなぜ変わらないのか」ではなく、
「自分はそこから何を学べるのか」に変わっています。

すると、考える方向が少し変わります。

「自分は、ああいう言い方をしないようにしよう」
「部下に対して、知らないうちに同じような態度を取っていないだろうか」
「自分が大事にしたい関わり方は何だろう」

問いの向きが少し変わるだけで、ものの見方が変わります。
ものの見方が変わると、自分の行動を選び直す余地が生まれます。

質問力を高めるというと、つい「相手にどんな質問を投げかけるか」に意識が向きます。

もちろん、それも大切です。

ただ、その前に、自分自身が日々どんな問いを自分に投げかけているのかに目を向けてみる。

そこに、質問力を高める大きなヒントがあるように思います。

行動を変える起点は、意志の強さだけではありません。

どんな問いを自分に投げかけているか。
どんな問いを相手に渡しているか。

問いが変われば、見える景色が変わります。
見える景色が変われば、選ぶ行動も変わります。

質問力とは、相手の中にある「問い」を変える力です。

そしてその第一歩は、相手に問いを投げかける前に、自分の中で回っている問いに気づくことなのだと思います。