栄木の”ひとり言”

【第288号】「70点主義」のススメ

読者のみなさまは、最近、こんな思いに駆られることはありませんか?

仕事で失敗したくない。
お金はなるべく損をしたくない。
時間を無駄にしたくない。
人間関係も、自分が良いと思う人とだけと付き合いたい。

だから努力する。投資する。少しでも効率よく動こうとする。余計な出費を避ける。無駄だと思う人付き合いを避ける。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。むしろ、現代を生きるうえでは必要な感覚でもあります。

ただ、そこに「100点主義」が入り込むと、少し厄介なことが起きます。

「100点主義」とは、常に完璧な結果を求めるというより、
「失敗することは悪い」「損することは悪い」「間違えることは悪い」という感覚に、
必要以上に縛られてしまうことです。

たとえば、ポイントカードをつけ忘れた。
自分が買ったものが、翌日もっと安く売られていた。
思ったより得るものの少ない時間を過ごしてしまった。

本来なら「まあ、そういうこともある」で済む話かもしれません。
でも、100点主義が強くなると、こうした小さな出来事でも、必要以上に落ち込んだり、後悔したり、自分を責めたりしてしまう。

あるいは、「時間を浪費させられた」「損をさせられた」と感じると、必要以上に相手を責めることになってしまうこともある。
最近の、スポーツでの誹謗中傷コメントは、顕著な例です。

これが、100点主義のひとつ目の副作用です。
小さな損失に、心が大きく揺れてしまうのです。

もうひとつの副作用は、行動へのハードルが上がることです。
何かに取り組もうとしたときに、「ちゃんとやらなきゃ」「失敗は許されない」という思考が、知らず知らずのうちに入り込んでくる。

メールを1本送るにも、必要以上に慎重になる。だから”チャッピー”に添削してもらう。
自分の考えが正解ではなかったらどうしようと思い、意見を引っ込めてしまう。
やり慣れていない仕事が、必要以上に負担に感じられる。

その結果、負担の少ないやり慣れたタスクに逃げる。ネットサーフィンに逃げる。先延ばしする。
「ちゃんとやらなきゃ」と思いが、同じくらいの反作用として、現実逃避を生みます。

実はこれ、筆者のここ最近の実体験です。
自分でも気づかぬうちに、「100点主義」に陥っていました。

現代社会は、私たちに「足りない自分」を意識させやすい時代です。
お金、時間、健康、仕事、人間関係。あらゆるものが比較され、評価され、数値化されます。

ただ、数値化できるものが増えるほど、人は「足りないもの」にも目が向きやすくなります。
こうなると、満たされていてもすぐ渇いてしまい、どこか満たされない状態が続いてしまいます。


では、どうすればいいのでしょうか?

そこで最近、筆者が大事だと感じているのが「70点主義」です。

70点主義とは、手を抜くことではありません。
低い基準にすることでもありません。

お金は失うこともある。
時間を無駄にすることもある。
やっかいな人に出会うこともある。
仕事で失敗することもある。

それでも、人生は続いていく。
そして、また整え直せばいい。

筆者自身、そう考えるようにしたところ、不思議と心が軽くなりました。

「完璧にやらねば」と思っていたときは、心の中に抵抗がありました。
でも、「何事も70点でいい」と思うと、余裕が生まれます。

余裕が生まれると、行動に移しやすくなる。
負担感が減るから、今やっていることに集中できる。
集中できると、結果としてやり切れる。

また、他人に対しても「70点でいい」と思う。
だから、苛立つことも、ストレスに感じることも減る。

つまり70点主義とは、100点を目指さない生き方ではありません。

不完全な現実を受け入れたうえで、自分を動ける状態に戻す考え方です。

100点主義は、「失わないこと」に意識を向ける。
70点主義は、失うこともあると受け入れたうえで、「行動」に意識を向ける。

完璧に備えることよりも、崩れたときに整え直せること。

これからの時代には、そんな力が大切なのかもしれません。